
滝川
水上勉さんのこと
芳紀17の頃、リバイバルのかかる映画館で『飢餓海峡』を観ました。原作のクレジット水上勉は、児童劇団に入るテストの面接官スイジョウさんだ、と気づきました。読み間違えていたのでした。
9つの私はドキドキして座ると、目の前にずんぐりむとくりの彫りの深い2枚目面接に質問されました。
「芝居ってどういうふうにしたらいいと思ってる?」
「夕焼けを見ていたら綺麗だと思って、それをお友達に伝えたい、というふうにです」と答えました。
「そうなんだよ!芝居ってそれなんだよ」と幼い私に目線を合わせておっしゃってくださいました。その方が水上勉さんでした。嬉しかったです。
特技を披露することとなり、カセットテープ持参でチャールストンを踊らせていただきました。水上氏は目を細め、すまして座っていた母親に「こんな娘さんがいたらお母さん楽しいでしょう」と話しかけられました。
とても印象深かったのは、母と水上氏、ふたりの目線が艶っぽく数秒絡め合っていたことです。
帰りに母は私に「スイジョウさん、かっこ良かったね」と言いました。