塩見 鮮一郎公式 掲示板

過去ログ4659 2025/4/30 14:12

▼世話人
読書C
早乙女朋子『バーバーの肖像』(1996年1月初版)

ネタバレと、盛んにいう。ドラマや映画の批評によく出てくる。
便利だから使いますが、ネタバレと言わないで、ネタがバレないようにするのがうまい書き方だ。
でも、バーバーの肖像ではどうだろう。
隠されたネタに驚きながら読み進める。のに。

バラしてしまえば、かんたんだ。
少女の母は美しい。無邪気で、すこし妖艶だ。
英国風ゼントルマンのモダン老人だ。
母と姉と少女は日曜日には、鎌倉の老人の借間をたずねる。
少女は老人が父のように思える。
父だといいのに。
入れ歯になっていっしょにいたい。

わかりますか、どういう絵解きになるか。
次回、ネタバレ。
これから読む人は警戒してください。

HP

▼滝川
入れ歯
嬉しいです。ありがとうございます!

生存上の理由で、見たものに擬態する気質だからでしょうが、本当にコップの中の入れ歯は美しく神秘的に見えました。そばに居られるのは羨ましかったです。 Up 4/29 19:47


▼世話人
読書B
「パンを食べるときも、いつも一緒にいられるからだ」
と書くのです。
さらに、
「枕元のコップの海の中で、その人が消えないように
寝顔を見張っていたかった」

少女が愛してやまない老人は、
寝るとき、枕元のコップの水に入れ歯を沈めたのです。
それをそっと、うかがっているのです。

少女のえがたい感性が現れます。
このようなメタファーが、ごく自然に書きとめられます。

HP

▼世話人
読書A
200枚弱の作で、
とても単純な作りのように見えるが
作りに巧者のひねりがある。
読者はだまされるが、だまされる楽しさもある。

この作のよさは、1に文章、2にストーリー。

文章は11ページの写真中頃にあるような「生(き)」のメタファー。
主人公の少女はバーバーをとても好きになり、老人の入れ歯になりたいと言う。なんと入れ歯です。
選考委員や編集者がそつと直すように言わなかったのはハッピーです。
この作者以外には思いつきません。
作者が読んだ絵本や小説にも出てきません。
これはほんとに夢見た体験に根ざしていて、
小説の「原姿」になります。

HP

▼ヒロキ

やはり、掘るのが楽しいのかな。
貰った筍を糠で、灰汁抜きして、胡麻和えでいただく。
私は、わがままなので、天ぷらが好きです。


▼世話人
読書@
早乙女朋子『バーバーの肖像』(1996年1月初版)

すぐれて奇跡的に誕生した少女期の感性。
それとともに、背後に同時的に進行していた悪徳の物語です。
作品について書きたいのですが、すばる賞を受け、
雑誌発表が12月、この単行本が翌年の1月。

この時期、わたしはホスピタルと斎場の間にいて、
また、お別れ会がありました。
世事に気がまわらないうちに見過ごし、
今回初めて単行本で読みました。ちょうど30年が経過しています。

そして、既視感があったのです。
鎌倉、モデルのマザー、老紳士。だれかから話に聞いたような。
それも、この作品にふれるずっと前に。
信じられるか信じられない記憶。
この本を読むまで忘れ、
読んでよみがえる記憶の破片。
(つづきます)

HP

46604658

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