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過去ログ408 2008/12/29 11:24

▼世話係
2]
 遊女たちはいずれも若くて十代の後半だろうが、ひとりの例外もなく腹部がふくらんでいる。みんながみんな妊娠しているわけではない。堕胎中の女もふくらんでいるが、まだ妊娠二、三ヶ月で、赤子のためにふくらんでいるのではない。
しばらくは、わが体型と照らし合わせて、運動不足の結果にちがいなかろうと軽く受けていたが、「まてよ」と思考が反転した。はだけた衣装からのぞくのは、すこしたれ気味な乳房で、そのまま、へそを頂点にまるくふくらむ腹である。立てひざの女を除くと、恥部は衣装で隠されているが、腹だけはことさら強調されている。そのふくらみを描く画家の線には、これぞ女のうつくしさだという息づかいがこめられている。腰の張りを描くのとおなじように、なめらかにしてやわらかい。とすると、カガミモチのようにふくれた腹部に江戸の男たちは色気を感じ、そっとなでて賞味したくなったのではないか。腹のふくらみが、豊饒(ほうじょう)のシンボルかどうかはともかく、きっと江戸の美の基準に合致しているのだ。現代のようにくびれたウエストは、当時の男たちには、飢饉(ききん)のときのやつれはてた老女を連想させて興がそがれたのかもしれない。
 何年かまえ、わたしは江戸時代の女が立ち小便をしていたことに注意を払った。そのきっかけも最初は浮世絵で、廊下のすみに立つ若い女が、着物の裾(すそ)を引きあげて腰をうしろにすこしつきだして、足のあいだの桶(おけ)に小用を足していたのだ。そんなことが日常にあろうはずがあるまいと、一瞬、わが目をうたがったが、曲亭馬琴(きょくていばきん)の『羇旅漫録(きりょまんろく)』に、京都の町では、「富豪の女房も小便は悉(ことごと)く立て居てするなり、立ちながら尻の方をむけて小便するに耻じるいろなく笑う人なし」とあることで解決した。
こんどの、ふくらんだ腹こそがうつくしいということについては、だれがどのように書きとめているのだろうか。ひさしぶりの、「たばこと塩の博物館」への道草は、江戸の女の腹部の肥満の美の発見になった。
12/29 11:24

▼世話係
1]
五十六の段 浮世絵の女

 NHKに用事で出かけたとき、すこし時間があったので、渋谷駅から公園通りをのぼって行った。右手に「たばこと塩の博物館」がある。ここはわたしのお気に入りのスポットのひとつだが、しばらくごぶさたしていた。特設展示はなにだろうと寄ってみた。ありがたいことに吉原がテーマであった。
 ただ、「浮世絵に見る江戸吉原」という表題だ。もしかすると、仲ノ町の桜満開の図とか、おいらんの艶姿、美人画のたぐいか、それとも広重の絵か。少々陳腐な展示かもしれないと、生意気にもあれこれと想像をめぐらしながらエレベーターに乗った。
やはり知っている絵もいくつかあったが、「遊女の生活」というコーナーに、遊廓の舞台裏のスケッチがあった。いまでいえば、踊り子の楽屋とか、おおきなバーのホステスの控えの間。そのようなところの、着飾る前の遊女の姿が描かれていた。それにしても、だれが書いたのか。だれでもが足を踏み入れることができる場所ではない。カネが払えなくて、代わりに妓楼で下働きをすることになった絵師がいたのだろうか。
 座敷の戸障子を取りはらった広い空間に、遊女たちは寝そべったり、すわったりしている。いずれも、だらしない。夏なのか、肌ぬぎである。立てひざにした脚のおくが、すっかりのぞいていても平気だ。そこをまた、画家はちゃんとリアリズムでこまかく描いている。いや、そのようなことは些細なおもしろさで、ある女は鍼(はり)で堕胎(だたい)をしているし、べつの女は避妊のための灸を恥丘(ちきゅう)のあたりにすえている。坊主頭の鍼灸師(しんきゅうし)がむきだした白いおなかに顔をくっつけ、仔細よろしく業務に励んでいる。廊下から座敷をのぞいて、なにかを命じているのは、妓楼の主人にちがいない。延々と長い誘いの手紙を書いている遊女のそばに、あどけない禿(かぶろ)もいる。遣手婆(やりてばば)もいる。
 吉原といえばいつも華麗な美しさが強調されるのを残念に思っていたわたしには、まさに興味津々たる一枚であった。おおいに満足して絵の細部までを楽しんでいたが、そのときひとつのことに気がついた。
12/29 11:23

▼岡坊
老後の楽しみ
の弟19回五十六の段浮世絵と五十七の段沈黙を読みたいのですが、できますでしょうか。
年末のお忙しい時なので、年明けで結構なのですが。
ちなみに写真がピンボケなのは、助かりました。
酔っ払いに感謝です。
12/29 9:40

▼世話係
写真
は、だれが写したのか、すべてピンボケでした。かなり酔ってるお方ですな、わがカメラを使用したのは。ま、一座の面々は恥をさらさなくてすんだわけです。
12/29 0:01

▼岡坊
二日酔い
を乗り越えようと、
そば湯わりで迎え酒をしたら、
その時はスカッとしたけれど、
再び熟睡してしまった。
忘年会ありがとうございました。
12/28 19:42

▼世話係
それにしても
矢大臣はなかなかの出来で。
天気はよいのに二日酔いで沈没中。
12/28 10:39

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