塩見 鮮一郎公式WEB 掲示板
過去ログ2045
2013/4/16 20:11
▼岡坊もう一度きたら、きびしそうです。
大地に祈るしかないですね。
4/16 20:11
▼水前岡坊さんちょっと留守しとった間に、また阪神が揺れたごたるですね。ばってん岡坊さんは無事で良かったです。どこでなんが起こるかわからん世の中ですたい。
4/16 18:32
▼世話係10ちいさい赤い実は、ぽつんぽつんと血が散ったように見えた。
「それなら、あなた。もうむりをなさらないで、きょうはこのまま帰りましょう。ここまでこれただけでも、ようござんした。またなん年かたてば、こんどはもっとさきまでまいれましょう」
お多可はしゃがみ、顔の左右にたれた黒い布をめくって顔をのぞきこんでくる。庄左衛門もまた女を見た。いつしかふけこんだが、まだ早蕨の面影をさがすことができる。なによりも、気持ちがまっすぐにあらわれた目はむかしのままだ。
姉のみ津がくれた一両をもって、天神橋へと早蕨に会いに行ったのは、十二月三日の夕食のあとであった。
焼き魚とみそ汁をかきこむと、おおかたの者は本所林町の道場から出て行った。倉橋伝助は吉良邸の偵察をつづけに、堀部安兵衛は義父の弥兵衛と妻のいる矢の倉の米沢町へ、木村岡右衛門も妻子のまつ家にもどった。残った者もそっとすがたを消した。脱盟者の色ぼけをあざ笑ったあとでは、行きさきを公言できるはずがなかった。小山田庄左衛門もまた、みなとおなじであった。
あと二日の命であったが、あす四日は討入りの道具の総点検をする手はずになっていた。羽根をのばせるのは、こよいが最後であった。
竪川(たてかわ)を東へむかい、十間川にぶつかると北上した。半里とすこしの距離だから、四半時(三十分)のちには、亀戸天満宮(かめいどてんまんぐう)についていた。八月二十四日の祭礼の日には大群衆があつまるが、平日は人もまばらだ。天神橋(てんじんばし)から一歩うらへまわれば、もう田畑がひろがっている。竹やぶがあったり梅林だったりする。
ふるびた農家の空いたのが、いまでは女たちのすまいになっていた。しゃれた木の戸をおして入ると、土間にはおかみがちょうちんをもって立っていた。
「あすの昼まで、これで」
と、カネをわたした。
「ほほほ、こりゃ豪勢な。なん人でもお呼びいたしますよ」
「早蕨(さわらび)だけでよい」
というとき、声がかすれた。のどがからからになっていた。
「はいはい。さ、どうぞこちらへ。日がおちると、またいちだんとひえます」
と、おかみは愛想笑いをたやさなかった。
いつもは広間に屏風を張りめぐらしただけの相べやでみじかいひとときをすごすだけなのに、カネの力はすごい。赤い毛氈を敷きつめた六畳間には、数本のろうそくがゆらめき、火鉢には炭火がもえていた。
4/16 8:48
▼わかけん三國息子もいい役者だ。
おやじはすごかった。
人生が役者だからなあ。
90歳。
神聖喜劇役者。
さみしい。
4/16 0:22
▼咲そうですうないおとめは、純愛じゃないです。おとめには、金目当て二人男じゃなく、別にいたんです。心から愛する人が。ははは。わからんけど。
三國さん、亡くなりました。本を持ってます。 ショックです。きょうけんの方だったのではないかと思います。
4/15 12:26
▼世話係9金杉橋をすぎるといつのまにか海が左手すぐそばにあらわれた。浜に打ちよせる波の音がきこえた。潮のにおいのする風が吹きつけた。道の左右から、庄左衛門の行く手をさえぎるように、石垣がつきだしていた。中央には門があるが、いつもおおきくひらいたままだ。いまでは門番も置かれていないが、高輪(たかなわ)の大木戸(おおきど)であった。
高札場が丘の側にある。
もうすぐだというのに、通せんぼするのかと、石垣をこぶしでたたいた。たかさが胸のほどもあり、うえにはさらにたかく土盛りがしてあった。
行けるのだろうか。
早くつきたいが、そこへ行きつくことができるのか。もう、足がもつれだし、左右の手のうごきもおかしくなった。顎ががくんがくんとゆれた。
石垣から首をつきだして往還をのぞいた。芝車町(しばくるまちょう)のさきに泉岳寺の境内道(けいだいみち)があった。二町(約二百メートル)ほどしか離れていない。気のせいかどうか、そのあたりに人が立てこんでいた。
牛の荷車がならび、半纏(はんてん)の車夫(しゃふ)たちがおおいのは、この町の住人だから当然だとして、どうしたことか町人がおおい。旅人もいりまじり、武家のすがたもある。みんな茶店やだんご屋、うどん屋や酒店のならぶ泉岳寺門前町に入って行く。
「ああ、夜あけまえか、それとも、くらくなってからくればよかった。いや、そのような時刻は寺門(じもん)がしまっていよう。ここまできて、もう目と鼻のさき。それなのに、足が一歩もすすまねえとは、ああ、いってえどうしたことか」
と、庄左衛門はとほうにくれた。
「あなた、お気をしっかりもちなされ」
と、ききなれた声がした。この一途なひびきのこもる声にいつもたすけられた。この声にすがりついてきょうまで生きてきた。
「早蕨(さわらび)か」
「お多可です。恥ずかしい名をよばないでくだされ」
「ああ、そうであったな。むかしを思いださせてすまねえことをした」
「やはり泉岳寺へまいられるおつもりでしたか」
「それがな、はやる心でここまできたが、ここからさきへは足がすくんで歩けねえ」
といい、庄左衛門はしゃがんだ。
「なんとしたこと、お気の毒に」
「だめだ。もう進みとうない。どのつらさげて山門をくぐれようか」
雪の残る道ばたに、南天(なんてん)が実をつけていた。ちいさい赤い実は、ぽつんぽつんと血が散ったように見えた。
4/15 10:32