塩見 鮮一郎公式WEB 掲示板
過去ログ1988
2013/2/12 9:05
▼世話係これで新学期のトップが決まりましたね。
おめでとう。
2/12 7:08
▼SYUPO 横から入ってすいません。
「東京家族」のホラー版みたいな短編作品を書きました。瀬戸内海の島が舞台です。
『恐怖通信 鳥肌ゾーン2 うずまき』(東雅夫 編・監修 ポプラ社)という作品集に入っており、サブタイトルが拙作から取られています。9日に出ましたので、よろしかったらお読みください。
2/12 3:23
▼わかけん築地情報ありがとうございます。
やっぱ高いのか〜。
千里浜調べてみます。
2/11 12:27
▼蜘蛛深川どんどん引き込まれていきます。
登場人物の一人一人が気になる存在です。
2/11 10:56
▼世話係つづき17おもてのほうに雪駄を引きずる音がして、ついで先生のひょろりとしたすがたがあらわれた。
「おい、どうした、店があいたままだ。石屋の甚助(じんすけ)さんが赤子のくすりを取りにこよう」
「おかえりなさい。店も気になるが、お勝手もいそがしいのさ。それで、どうでした、早かったじゃないか。伊予さんのいたみ、すこしはやわらぎましたか」
「ああ、一時はやむが、根治(こんじ)したわけではねえ。すぐにまたいたくなる。ありゃもう打つ手がねえ。きつねの干し肉をほしがってたが、それまでもつかどうか」
「肝(きも)、見ますか」
と、直助がさきほどの皿をもって、敷居をまたいで土間へ入ってきた。だまって出かけたと、あれほどおこっていたのに、先生のまえではおくびにもださない。
「うむ、どれどれ。ああ、なかなかにいい色つやだ。よし、直助、これからとどけにまいろう。お多可、重箱をだしてくれ。大黒屋の大旦那がさぞ、よろこぶぞ。うひ、うひ、ひひひ」
「なによ、その笑い」
と、お師匠が先生の耳を引っぱった。
「いててて、いっひひ。こんやは極楽だあ。相方(あいかた)はいってえだれか、奥方でねえことはたしかだろうな」
「おまえさんらしくもねえ無駄口をたたいてないで、すぐに行っておいでよ」
と、お師匠がしかった。
「わかった。すぐに出かけるが、そのまえに、熱い茶のいっぱい飲ましてくれ。体がひえこんだ。直助、肝はお重に、生き血はひょうたんにいれるのだ。それと、おめえの手足をよく洗ったほうがいい。血だらけでねえか。鈴ヶ森に送られては、てえへんだ」
「それでは、こちらでお茶を。はい、はい」
と、お多可はいそいそといろりの間へ行った。
「いい年して、へっ、仲がよろしいことだべえ。つや、おれたちもこんやはうんとたのしむべえ」
つやのそばに直助がしゃがみ、浅黒い指でほおをつんつんとつついた。
「いやだ、おめえなどごめんだ」
指をはねのけて、うらへ逃げようとした。
「よし、わかったべえ。それなら、つや、もう二度とくるでねえぞ」
直助はぷいと背をむけて井戸端へもどった。
「ふん」
つやは鼻をならした。継ぎのあたった直助のあわせの背をにらみつけていると、かまどの火がくすぶった。
(きつね了)
2/11 9:45