塩見 鮮一郎公式WEB 掲示板

過去ログ1987 2013/2/11 9:44

▼世話係
つづき17
おもてのほうに雪駄を引きずる音がして、ついで先生のひょろりとしたすがたがあらわれた。
 「おい、どうした、店があいたままだ。石屋の甚助(じんすけ)さんが赤子のくすりを取りにこよう」
 「おかえりなさい。店も気になるが、お勝手もいそがしいのさ。それで、どうでした、早かったじゃないか。伊予さんのいたみ、すこしはやわらぎましたか」
 「ああ、一時はやむが、根治(こんじ)したわけではねえ。すぐにまたいたくなる。ありゃもう打つ手がねえ。きつねの干し肉をほしがってたが、それまでもつかどうか」
 「肝(きも)、見ますか」
と、直助がさきほどの皿をもって、敷居をまたいで土間へ入ってきた。だまって出かけたと、あれほどおこっていたのに、先生のまえではおくびにもださない。
 「うむ、どれどれ。ああ、なかなかにいい色つやだ。よし、直助、これからとどけにまいろう。お多可、重箱をだしてくれ。大黒屋の大旦那がさぞ、よろこぶぞ。うひ、うひ、ひひひ」
 「なによ、その笑い」
と、お師匠が先生の耳を引っぱった。
 「いててて、いっひひ。こんやは極楽だあ。相方(あいかた)はいってえだれか、奥方でねえことはたしかだろうな」
 「おまえさんらしくもねえ無駄口をたたいてないで、すぐに行っておいでよ」
と、お師匠がしかった。
 「わかった。すぐに出かけるが、そのまえに、熱い茶のいっぱい飲ましてくれ。体がひえこんだ。直助、肝はお重に、生き血はひょうたんにいれるのだ。それと、おめえの手足をよく洗ったほうがいい。血だらけでねえか。鈴ヶ森に送られては、てえへんだ」
 「それでは、こちらでお茶を。はい、はい」
と、お多可はいそいそといろりの間へ行った。
 「いい年して、へっ、仲がよろしいことだべえ。つや、おれたちもこんやはうんとたのしむべえ」
つやのそばに直助がしゃがみ、浅黒い指でほおをつんつんとつついた。
 「いやだ、おめえなどごめんだ」
 指をはねのけて、うらへ逃げようとした。
 「よし、わかったべえ。それなら、つや、もう二度とくるでねえぞ」
直助はぷいと背をむけて井戸端へもどった。
「ふん」
つやは鼻をならした。継ぎのあたった直助のあわせの背をにらみつけていると、かまどの火がくすぶった
2/11 9:44

▼なゆ
築地の二次会について
はまふさはちょっと高く小料理屋価格です。いつものペースで飲むと一人4000円超になります。

三原橋そばの千里浜までいくか、東銀座付近のチェーン店をチョイスするのが無難ではないかと思います。
2/10 18:11

▼世話係
つづき16
そうじゃあねえだんべえ」
「そうじゃねえといっても、おめえとお師匠さんのどっちがほんとのこといっておるのか、わしには区別がつかねえ」
「おれのいうことが信じられねえだんべ」
「ああ、信じられねえ。お袖という女のこと、きょうのきょうまでかくしてた。そんなやつのいうことなど、なんで信じられるか」
「つや、こんや、小屋にこい。ほんとのことをゆっくり話してきかせてやるべえ」
「いやだ。小屋にはもう行かねえ」
「こやつ、やさしくしてやればつけあがりやがって。『こい』といったら、すなおにきやがれ」
「いやだといえばいやなのさ。きこえなかったのなら、もういちど、大声でいってやろうか」
「つや。これ、つやはどこか。かまどの火が燃えつきておる」
と、お師匠の声がして、下駄の音がちかづいてきた。
 「へえ」
 あわてて返事をした。
 「また、へえというのかい。さ、直助とおしゃべりするひまがあったら、せんたくをとりこんでおくれ。風がでたし、雪がいつ舞いおちてくるかもしれねえ。とりこむのがすんだら、干し大根をつけなきゃ。きのう、当座の百本を樽につけたが、きょうは夏の土用までのぶん百本をつけるのだ。きょうのぶんは、塩を倍にするのをまちがえねえようにな。それに、ぬかはすくなめだ。つや、するこたあ山ほどもある」
「うるせえ、ばばあだ」
と、直助が目で合図した。
 「ふん」
 つや無視して土間にかけこんだ。出てきたお師匠とすれちがい、かまどのたきぐちにしゃがんだ。まきは燃えつきて炭火になっていた。ほそい木切れをえらんでくべ、火吹き竹に力いっぱい息をこめた。お袖という女の名をきいたのは初めてなのに、はや頭の中心にどんと居すわっていた。
「直助。きょうの夕食はきつね汁だから、おまえさんの出番だよ」
お師匠が井戸のそばで直助にいった。
 「そのことだが、おかみさん。おれは大黒屋にさっきの生き胆をとどけねばならねえ。ひと時(二時間)はかかるだんべえ」
 「ねぎやごぼうなどはこちらで用意しておくさ。帰ってきてすぐに煮こめばよい」
 「せりもあるとうめえ」
 「つや、せりはうらのどぶのわきに生えてたな」
と、お師匠がつやのほうに声をむけた。
 「へえ」
 どうせ取ってこいというのだろう。つぎの言葉をまっていると、おもてのほうに雪駄を引きずる音がして、ついで先生のひょろりとしたすがたがあらわれた。
 
2/10 10:56

▼世話係
そうですね、蜘蛛姫さん、
政治敵「異民族」
という定義、いいてすね。
2/10 0:02

▼世話係
松田健二 さん
じじいになると、昔を
思い出しますね。
いつしか、泣き上戸になり、
「愛する炎の残像」を
思い出し、
また泣いています。
2/9 23:59

▼蜘蛛
始まってますね
直助とおつやちゃんの会話・・・何かが起きるのか。

わかけんさん、蜘蛛に居酒屋さんを聞いてもわからないです〜 すみません。

今日はお城大好きさんと古代史講座でした。
日本版中華思想と蝦夷・隼人
=人類学的・文化的な異民族でなく、日本の律令国家が中華帝国であるために政治的に設定された「異民族」
なるほど、でした。
2/9 20:49

19881986

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