『カシェルの思い』

 ここはモンスターパーク。ルーメンから5分のところにある、魔物たちの楽園。
かつて魔王に仕えていた魔物たちは、ある者はのんびりと、ある者は充実した一日を送っていた。
(PC)
 太陽が西からさしている朝。ジェネラルダンテのカシェルは、流れ行く雲を見つめていた。なんという名前だったかは忘れたが、もくもくとした雲。ふと足元を見ると、草原が朝露にぬれて光っている。それは足に跳ね、冷たい感覚をカシェルに与えていた。
「お〜い!」
声が聞こえる。そちらをみると、鉄球魔人のタイニーがこちらに走ってくるのが見えた。
「おい、探したぞ!もうバトルトーナメントの参加者はスタイバイしろだとさ」
 タイニーはカシェルのところまで来るといった。遠くから走ってきたのか汗をかいていたが、息を切らせていないところは立派だ。
「ああもうそんな時間か…。分かった。いま行く」
タイニーにそう返すと、カシェルは走り出した。後をみると、タイニーが追いかけてきている。カシェルは走りながら、今は亡き友のことを思い出していた。
(PC)
 テリーは、カシェルが唯一親友といえる相手だった。もちろんタイニーや、他の魔物達が友人ではないという意味ではない。しかし、テリーには同族というだけではないなにか特別な感情を抱いていた。
 生まれたときからカシェルは一人ぼっちだった。母親や父親の記憶はない。カシェルは、誰にも頼らずに一人で暮らしてきた。そんな時、テリーが現れた。
「一緒に暮らさないか?」もともと孤独を好むジェネラルダンテにはらしくない言葉。しかし、カシェルはその「らしくなさ」に興味を持った。カシェルとテリーは、二人で生活するようになった。寒い日は、温かいスープを二人でつくり、火を囲んで語り合い、身体を寄せ合って眠った。その生活の中で、カシェルはテリーに心からの信頼を置くようになった。テリーも、カシェルを慕っていた。二人は、最高の友となった。しかし、そのテリーももうこの世にはいない。
(PC)
 会場に着くと、会場の魔物たちが拍手をしているのが見えた。その視線をたどると、ドラゴスライムがゴールゲートをくぐったところであった。名前は…ドランといったか。どうやら最下位だったらしく、会場にあったパンや網の片づけが始まっていた。
 昔、ドランは、カシェルに弟子入りを志願してきたことがあった。
「俺…強くなりたいんです!どうか、弟子にしてください!」
近頃はなかなか見ない燃えた目をしていた。半端な気持ちではないということがその目から読み取れた。しかし、カシェルには弟子を取る気はなかった。自分に教えられることはないと思っていたからだ。それは、自分は強いという驕りの気持ちをもちたくないということでもあった。
「お前を弟子にすることは出来ない。帰ってくれ」
その一言で十分だった。ドランは、一瞬でカシェルの真意を汲み取り去っていった。その後、タイニーの弟子になったという話をタイニー自身から聞いた。
「あいつはすごい奴だ。毎日5時間、ひたすら稽古をしても弱音ひとつはかねえ。俺の若いころにはそんな根性はなかったな…」
ドランがへとへとになってタイニーにかかっていったのをカシェルはよく見かけた。それだけではなく、ドランが毎日タイニーに内緒で自主練習をしていたのをも知っていた。そのひたむきな姿を見て、カシェルはドランに好感を抱いていた。
「まあ、ビリになったのは悔しいだろうが、くじ引きの結果だから仕方ないだろう。障害物競争で強さが競われるわけではないからな」
「まったくだ」
ガッハッハと二人は笑いあった。
(PC)
「―では、私はもう行かせて貰う」
「おう。頑張ってこいよ」
オーガーの言葉を背に受け、控え室に向かった。太陽も先ほどより高い地点にある。草原も先ほどより乾いていた。
 バトルトーナメントの開催の知らせを聞いたとき、カシェルは真っ先に出場の申し込みをした。これは、いわばチャンスだった。亡き友との約束を仮にでも果たすチャンス。この戦いで、負けるわけにはいかない。
「簡単に負けたら、許さないからなっ!」
テリーの声が聞こえた気がした。
 バトルトーナメントは、三二匹のトーナメント制である。くじ引きで戦う相手を決め、コロシアムに入場する。そしてお互いの力・技・呪文の全てを注ぎ、相手を討ち果たすのだ。相手が参ったというまで、もしくは立てなくなるまで戦いは続く。そして、全ての戦いに勝利した者が優勝者となる。
 控え室には、多くの魔物がくつろいでいた。剣を研ぐ者、ひたすら眠る者、談笑する者…カシェルはその輪に加わらず、隅に向かおうとした。
「ジェネラルダンテさんもバトルトーナメントに出場するの?」
唐突にベビーニュートに話しかけられた。
「無論。私は、この大会で優勝するつもりだ」
それだけ言うとベビーニュートから離れていく。「大運動会」で本気になるのも大人気ないとカシェルは自嘲した。しかし、それに本気になる自分が少々可愛くもあった。
(PC)
 その日も、テリーとカシェルは一緒に歩いていた。
「鳥ってなにを考えているんだろうな。木の実を割ることばっかりか?」
「なにバカなことを言っているんだか」
「そんなこというなよ〜」
二人で笑いあったとき、彼らは現れた。
 緑の頭巾の少年。野生的な雰囲気を漂わせた少年。鎖帷子をまとった老人。赤い衣装の踊り子。テリーとカシェルは、彼らに戦いを挑み、そして敗れた。
 ふと意識が戻った。隣でテリーが倒れている。辺りには、血の海が出来ている。人間と同じ、真っ赤な血。それを見る限り、テリーが無事だとは思えなかった。しかしカシェルは、目の前の緑の頭巾の少年に心惹かれていた。
「貴方の心に惚れました…」
ゆっくりと立ち上がりながら言った。口の端から血がこぼれるがそのようなことは気にしていられない。
「貴方の柔らかい心を感じました。貴方が私を殺したいというなら逆らいません。しかしもしよければ、私を使役していただけないでしょうか」
 その後、カシェルは、少年・アルスの言葉に従いここにやってきた。ここは、魔物が平和に暮らせる唯一の場所。カシェルは、このようなところを紹介してくれたアルスにとても感謝している。魔王を裏切ったことには後悔していない。人間の心を知った今、人間を滅ぼす気にはなれない。しかし、テリーを裏切ったことになるのか今でも考える。
(私は、テリーとともに逝くべきだったのだろうか)
(PC)
 カシェルは、アルスに自分が倒されたときの事を聞いたことがある。
「あの時、私と一緒にいたのは、私の親友でした。あいつは、今もまだ生きているのでしょうか…」
アルスは、その澄み切った目を細めつつ、しかしまっすぐとカシェルを見て言った。
「…今はもう、生きていないだろうね…あれだけ血を流していたら……
 でも、そのことを悲しんでいてはいけないよ。彼だって、死を覚悟して僕たちと戦ったはずだしね」
「…わかりました…」
「もちろん、僕たちも死を覚悟している。でも戦い続けるのは、世界の人々のため。」
アルスは目を見開いた。
「そして魔物たちは、魔王のために戦っている。違いはあれど、自分の信じるもののために死ぬことができるということは幸せなことなんじゃないかな」
「……」
テリーは、魔王を慕っていたわけではない。しかし、その論には納得させられた。テリーは死ぬ間際に悔いを残すような奴ではない。むしろ、強い相手と戦えて打ち死ぬということに喜びを見出しそうだ。そういう点だけはジェネラルダンテらしい奴だった。
 それから、カシェルはテリーが死んだと認めることが出来た。もともと、テリーが死んだということを感じていたのだ。なんとも表現できない感覚が、カシェルを包んでいた。
(お前のことは忘れないからな。許してくれ)
カシェルは、心の中でテリーに許しを請うた。そして、この戦いで負けてはならないという決心を固めた。それは、テリーとの約束。
(PC)
 一回戦目の相手はダンビラムーチョだった。危なげなく勝てたが、カシェルはほっと息をつく。このようなふざけた容貌のモンスターに負けてはかなわない。二回戦目はメタルライダーとの試合だった。剣の腕はなかなかのものだったが、いかんせん一撃の重さが違った。メタルライダーが上段から思い切り剣を振り落としたとき、カシェルはメタルライダーの腕の中にもぐりこみ剣を弾き飛ばした。カシェルがメタルライダーの頭に剣をかざしたところで、メタルライダーは負けを認めた。その勢いで勝ち進み、カシェルは決勝戦まで勝ち進んだ。そして、テリーとの思い出を回想した。
(PC)
「ま、参った!」
倒れているのはテリーだった。その視線の先には、既に剣を鞘に納めたカシェル。
「ひゃあ〜負けた!適わないな。やっぱりお前強いな」
「まだ貴様に負けるほど堕ちぶれてはおらん」
そういってにやりと笑う。
テリーは立ち上がり、カシェルの隣に並んだ。
「おいおい言ってくれるじゃんか」
テリーもにやりと笑う。
 カシェルは草原に腰を下ろした。テリーも一緒に座る。草は丈が短く、地面に張り付くように生えていた。その慣れた座り心地は、二人の心を静める。
 空を見上げてみた。雲に隠れた月が申し訳程度に光っている。ここは、封印された土地。精霊の力を恐れた魔王が、聖風の谷に封印をかけたのだ。太陽が失われたため、草木は細り、人間達には、活気が失われていく。
「―なぜ魔王様は何故人間共を滅ぼそうとするのだろうな」
「俺はそんなこと興味ないな」
素っ気なく一言で返されカシェルはずっこけそうになる。
「!?貴様、折角私が真面目な話をしようとしているところを!」
「ああ悪いな。お前のこと考えててさ」
テリーは足を組みなおした。
「でも、正直いって興味がない。人間にも興味ない。こうしてお前と戦っていると思うんだよ。強さを磨くって楽しいってさ。自分の精神がより練り上げられてくって感じ。なんか毎日が充実しているんだよな」
「…お前らしくない言葉だな」
「人間で言う騎士道って奴かな」
テリーからそんな言葉が聴けるとは思わなかった。相変わらず何を考えているのか分からない。
(PC)
「まあ、魔王に文句があるなら、お前が魔王になればいいんじゃないか?」
「なにバカなことを」
「強さを磨いていっての最高の目標は魔王だろ。全ての魔物を率いる王者」
テリーは自分の言った言葉に酔っているようだった。
「お前が魔王になったら、俺は副将軍くらいにしてくれよ…」
「…貴様には任せたくないな。その時は、私が全ての指揮を執ろう」
「おいおいやる気だな。よ、次期魔王!」
テリーは調子がいい。そして、一人でどんどん盛り上がっていく。しかし、カシェルはなんとなくそのノリに合わせて見たい気分だった。
「よし分かった。私は魔王になってやる。魔物達を統べる最強の王になってやろう!」
「副将軍のこと、忘れるなよ。約束だぞ!」
「どうしてもというならしてやらんこともない」
二人は笑いあった。
 月も既に沈みかけていたが、太陽は昇らない。その後二人は酒を飲み、そして眠った。そして次の日、カシェルとテリーは別れることになったのだ。
 この時の約束に今でもカシェルは縛られている。魔王なんてテリーもカシェルも本気ではなかった。しかし、これはテリーとカシェルの最後の約束だった。その約束を、このトーナメントで優勝することで仮にでも果そうとしている。魔物の中で最強という称号が欲しかった、それだけである。実際は、このトーナメントで優勝しても最強とはいえないだろう。しかし、この大会で優勝出来ないようだととても魔王とは呼べない。カシェルは、優勝するという決心をさらに強めた。
(PC)
 決勝戦は大運動会の最後の種目として行われた。
 「決勝戦!両者、前へ」
メルビンの号令とともに会場に入る。周りから大きな拍手が沸き起こる。観客席を見回すと、魔界ファイターが賭けを仕切っているのが見えた。
”ジェネラルダンテ、倍率7.5倍 ナイトキング2倍”
と書いてある看板が見えた。 さらに見直すと、死神貴族が怪しい笑みを浮かべていた。眼があるわけではないのに、なにか企んでいるかのような怪しい視線を感じる。ほおを歪め、全てを見下すように見ている。そんな感じがした。
 目の前に立っているのはナイトキングだった。身体が腐敗しきって骨と化した魔物。高名な魔法使いが、更なる魔力を得るために魔族に魂を売った姿ということを、昔風の噂で聞いた。
「こら負けんなよ!」タイニーの声が響いた。「叩きのめしてやれー!」「ナイトリッチ頑張れ!」「ソロモン!ソフィアはお前をいつでも見ているぞ」「ゾンビの王は負けないんだー!」 決勝戦だからか、観客達もとてもわきだっている。
「試合、始め!」
メルビンの声が会場に響く。
身体ひとつの間合いでお互いの動きを牽制する。相手の呼吸、視線を観察し攻勢に出る機会を図っている。
 先に動いたのはナイトキングだった。
「わしは…負けるわけにはいかない!」つぶやく様な声ながらしっかりと聞こえてきた。右手の剣でカシェルの肺をついてくる。剣の鎬で左にうけながしながら、右に飛び避けた。
(しまった)突きは単なる牽制だった。体重を全く込めていない。突いた剣を返して地面に切り下げ、カシェルの首を狙ってくる。殺す気で攻めているのだ。咄嗟に落ちてくる腕に剣を刺した。ナイトキングの剣の動きが止まった。
 ナイトキングが一瞬不気味な笑みを浮かべた。剣を腕に刺したまま左手で抱え込む。
(!?)抜けない。ものすごい力だ。骨であるがゆえに剣と身体の接触面積は小さい。しかしナイトキングはその小さな部分で剣を封じているのだ。
 ナイトキングは剣を持ち替えた。剣がカシェルの胴を薙ごうとする。カシェルは手を離し後ろに跳ねた。カシェルは剣を失った。
(PC)
 ナイトキングは剣を腕から抜いた。そして、カシェルに剣を投げた。足元に剣が転がる。
「―何故剣を返す」
「剣のない相手に勝ったとしてもソフィアに顔向けが出来んでの」
「敵に情けをかけてもらうのは情けないものだな」
「嫌だったかな?」
「貰った恩は受けておく。感謝する」
 足元の剣を拾い、一度鞘に収める。
「言っておくが、わしはお主を殺す気でおる」
「それは分かっている」
「運動会だから可愛い戦いで済ませようとは思わないのじゃ。わしには勝たなければいけない理由がある。そしてきっと、お主にも何かしらの思いがあるのじゃろう。真剣な勝負、命を懸けて戦いたい」
「言うとおりだ。承知した。この命をかけて、貴様を討ち果たしてくれよう」
「分かってくれて嬉しいぞい。では…再び戦闘開始じゃ」
 そういうとナイトキングは一気に間合いを詰めてきた。剣を斜めに切り付けてくる。カシェルは身を屈め、足元を突いた。
 ナイトキングは、カシェルの剣の動きを見抜いたのだろう、剣があたる寸前で飛び上がった。空中から左手の盾を投げる。
 巨体が宙を舞うとはカシェルの予想外だった。飛んでくる盾に一瞬カシェルは眼を奪われた。盾は、カシェルの左足にぶち当たった。痛みに一瞬ナイトキングから気がそれた。
 ナイトキングは空中で剣を両手逆手持ちをしていた。全体重を剣に込め、カシェルの脳天を砕こうとする。
 カシェルは我に返り、身体をそらしながら剣で凌いだ。全体重がかかっているため、とても重い。それを左手一本で凌ぎきれるわけもなく―――――
(PC)
 右肩が軽くなった。血が噴き出す。意識を失いそうなほどの痛み。カシェルは左に倒れこんだ。
「右腕が飛んだようじゃの」
ナイトキングの言葉で初めて右腕がなくなっていることに気付いた。右を見ると、血だらけの肉塊が転がっている。それを見ていっそう痛みが強くなった。頭が割れるように痛い。
「―――
ナイトキングが何か言っている。メルビンが動いている気がする。しかし、カシェルには聞くことが出来なかった。カシェルは意識を失いかけた。
「なんであきらめるんだよ」テリーの声が聞こえた。
「今は人間達の世界で幸せにすごしてるんだろ?その幸せを捨てんなよ。まだ負けたわけじゃない」いつもの声で語りかけてくる。
「まだ左手があるじゃないか。お前は魔王になるんだろ?例え腕を失っても顔色一つ変えないのが魔王だろ」
(テリー…)唯一の親友の声。それはカシェルの頭の中に直接響いてくる。
「ほら立てよ。諦めるにはまだ早い。立ち上がれ、カシェル!!」
 カシェルは目を開いた。
「私は…負けない!」
血はまだ流れていたが、ゆっくりと立ち上がる。
「驚いたの。まだ立つとは。止めを刺しておけばよかったわい」
カシェルは剣を構えた。腕は減ったものの、逆に軽くなって戦いやすい。
(テリー…お前の気持ち、しかと受け取った。力を、貸してくれ……!)
「おりゃあ!」
 気合の声を出す。そのときには既に腕の痛みは消えていた。
 今度はカシェルが先に動いた。まっすぐと駆け、胴を貫こうとする。
「ぬぅっ!」
 ナイトキングが驚きの声を上げる。先ほどとは段違いのスピードだ。咄嗟に盾を掲げたが、剣は盾を砕いた。
 ナイトキングは動けないままだ。自らに迫りくる剣を虚ろな目で見ている。
「どりゃああああ!!!!」
 カシェルは、身体ごとナイトキングにぶつかっていった。
(PC)
 ナイトキングはまだ立っていた。しかし、その腹には深々と剣が突き刺さっている。
「わしは…死ぬのか…ソフィア…」
ナイトキングから生命感が失われていった。弱弱しい声。それはまさしく寿命が尽きる老人の姿だった。
「お前は最高の相手だった。最後に、名を聞こう」
「わしは…ソロモン。妻を裏切った最低の男よ…」
そこまでいうと、ナイトキングは崩れ落ちた。魂を失った身体は風化し風に溶けていく。
「それまで!勝者、ジェネラルダンテ!」
メルビンの声が聞こえた瞬間、カシェルは視界が歪むのを感じた。
(お前は…魔王だ…魔物たちを統べる最強の…)
どこからか声が聞こえた。誰の声だろうか。
(そうだ…私は魔王…テリーとの約束を果たしたのだ…)
カシェルは、突然意識を失った。
(PC)
 既に日は沈もうとしていた。草原も赤色に見える。
興奮冷めやらない魔物たちが集まる中、閉会式が行われた。アルスが各種目の表彰をしていく。最後に、バトルトーナメントの表彰。
「優勝、ジェネラルダンテ!」
アルスが言った。周りから大歓声が聞こえる。カシェルは、アイラから黄金に輝くメダルを受け取った。
「カシェル、感動したぞ!お前はやはり最高の戦士だ!」
タイニーの声だった。それ以外にも勝者カシェルをたたえる声が響いてくる。
「ナイトキングとジェネラルダンテの戦いはとても素晴らしかった。僕も涙が溢れてきたよ」そういうアルスの目には本当に涙が浮かんでいた。静まりかえった会場からもすすり声が聞こえてくる。
「みんな、腕を失ってなお戦ったジェネラルダンテのカシェルと、戦いで命を散らしたナイトキングのソロモンに、もう一度大きな拍手をしよう!」アルスの声で、会場全体が沸いた。誰もが拍手を惜しもうとしない。キングタートル、モシャスナイト、ギガントドラゴン…
(テリー…今日は助かった。勝てたのはお前のおかげだ。私は、お前のことを忘れないからな)
カシェルは心の中で手を合わせた。そして、第二の親友と呼ぶべきソロモンのことを考えていた。
(PC)