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モンスターパークの風景(ssスレ)

このスレは、ドラ雑のスレに書いたモンスターパークの小説を投下・鑑賞するものです。
 感想もどしどしどうぞ!批判的な感想・矛盾を指摘する文章でも甘んじて受けます。
 また、見てくれた人、ss書きに参加してくれるととても嬉しいです。では、ドラ雑に投下済みの『小さな恋のものがたり』『カシェルの思い』の投下を始めます。
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目の前を毒青虫が這っていった。そのあとを、サンダーラットが跳ねて追っていった。
「ちょっと待つっちゃ!お前が気にしてるとは思わなかったんちゃ!」
「いまさら何も言う気にならないんだな〜虫の気持ちを考えて欲しかったんだな〜」
何を言ったか知らないが、サンダーラットが毒青虫に何かを言ったようだった。
 「虫の気持ちを考える」、か。その言葉は、オレには一瞬「無視の気持ちを考える」と聞こえた。誰も、オレの気持ちは考えてくれない。オレはサンダーラットに背を向け、館に戻ろうとした。
 会場のほうから、ボールが飛んできた。そのボールは、オレの中に入った。少し痛い。
「すみませーん!こちらにボールが飛んできませんでしたかー!」
ミステリーピラーがこちらに走ってきた。白いシャツに灰のネクタイ、黒のスーツという服装は、司会者か審判を思わせた。
 ミステリーピラーは、オレを見るとこちらを見ると一瞬眉をひそめたが、さらに一瞬の後は何事もなかったかのように話しかけてきた。
「すみません。ここにボールが飛んできたと思うんですが?」
「いや知らないね」
オレは、ボールを返す気にならなかった。単なる、大運動会というものへの反抗心だった。
「ああそうですか。ありがとうございました」
ミステリーピラーは言った。腹の底ではオレに話しかけたくないと思っているんだろう。ミステリーピラーは、オレの言ったことを信じたのか他の方向へ走っていった。
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オレは、いつもの住処である塔に戻ろうとした。そこは唯一安心できるところだった。誰にも見られることなく、一人で孤独を楽しめる。
「ちょっと待ちたまえ」
 突然、後ろから呼びかけられた。
「大運動会はまだ終わっていないぞ。おや?ボールを持っているようだな」
死神貴族だった。最近オレに図々しく話しかけてくる男。しかし、その目的は友好を深めるためではない。あくまで利用しようとしている。オレは死神貴族を信頼していなかった。
 死神貴族はオレからボールを取り出し、草原に投げ捨てた。オレに馴れ馴れしく触ってくるな。
「今から面白いことが起きるのだが、見たくはないのかな?」
いったい何を企んでいるんだこの男は。馬が嘶いた。
「知らないな。オレは何の種目にも出ないし、観戦する気もない」
「そういうことを言っているわけではない。面白いことが起きるのだが」
「興味ねぇ」
「我輩を手伝う気はないか?」
いいかげんにしろこのがいこつ野郎。
「話は終わりか?」
「手伝う気はないか。残念だな。我輩は貴様を買っていたのだが」
「褒めているのか」
「無論」
「それはありがたい」
「では、我輩は行かせて貰う。面白いことがあるからな、明日誰かに話を聞いてみるがいい」
死神貴族は、馬に鞭打った。馬は走り出した。
 オレは、塔に戻った。
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 オレは塔で眠っていた。湿った冷たい空気。そして、時折吹くひんやりとした風。それらは、オレに快感を与えた。
 しばらくまどろんでいた。しかし、オレは侵入者を察知した。オレは誰にも心を許す気はなかったため、寝ていても緊張状態は崩さなかった。
 そいつはオレのところまでまっすぐやってきた。オレはそいつに目を向ける。
「スライムベスがこんなところに何の用だ」
塔にくるモンスターではない。スライムベスは丘か密林がお似合いだ。
「ちょっとお願いがあるんです…」
「お前もオレを軽蔑するのか」
オレは静かに言った。スライムベスにプレッシャーを与えるためだった。
「それは違います!」
考えていた反応と違っていた。
「あなたは、みんなのことを勘違いしてる。だれもあなたのことを軽蔑なんてしていなかった…」
オレは目を閉じた。スライムベスをまっすぐ見ていられなかったからだ。
「あれを軽蔑といわずになんと言う」
「それはあなたの勘違い。みんな、あなたに話しかけたかったんだわ」
オレは目を閉じたまま思い出した。オレを見るやつらの目……
「あなたは勘違いしてしまって、みんなを怒鳴ってしまった。それでみんな、あなたのことを怖がっているのよ」
スライムベスのいうことを否定できない。
「…そうなのか?」
「あなたはそれからみんなから離れて行動してる。だからみんなあなたのことを噂してるの。あなたがみんなと仲良くしようとすれば、みんなはあなたを受け入
れてくれる」
その考えは出てきたことがなかった。スライムベスに教えられるなんて思いもしなかった。
「私は、今借り物競争であなたの名前を貰いました」
 スライムベスはオレに「19185」と書いてある紙を見せた。
「私と一緒に、メルビンさんのところまでいってくれませんか?」
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 オレは、コロマージとコロプリーストが話しているのを聞いたことがある。
「人食い箱って何を考えてんだろうね〜」
「訳わかんないあの子。会うだけで睨み付けてくるし」
「うんうん気持ち悪いよね〜」
オレがいることに気付くと、コロマージとコロプリーストは脱兎の如く逃げていった。悲しかった。オレは、なぜこんな目にあわなければいけないのだ。気がついたら、オレは泣いていた。
 オレがここに来たとき、やつらは何を考えていたのだろうか。歓迎?軽蔑?好奇?警戒?やつらが何を考えていたのか分からない。オレは、やつらを怖がらせていたのだろうか。
 オレは今まで、やつらに牙を剥き続けた。やつらがオレを軽蔑していると思ったからだ。しかし本当に、やつらはオレのことを軽蔑していたのだろうか。
 今のオレは、やつらにどう見えているんだろう。変わり者。プライドの高い奴。そして、自分達に意味の分からない敵対心を抱く奴。
「意味の分からない敵対心」。その通りだ。オレのやつらに対する敵対心は、オレの思い込みによるものだ。
 なぜオレだけこんな目にあわなければいけないと思っていた。それは思い込みだった。やつらは、すべてのモンスターを歓迎している。しかし、オレが歓迎さ
れたがらなかったのだ。オレが人と壁を作るから、やつらもオレと壁を作った。
 全ては、オレの被害妄想だった。
(PC)
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 俺は目を開けた。
「分かった。行こうじゃないか」
オレは、やつらに謝ろうと思っていた。今まで、意味もなくにらみつけていたこと。許してもらおうとは思わない。許してもらえなかったらそれはオレのせいだ。
「ほんと!?ありがとうございます!」
スライムベスが跳ねた。満開の笑顔。それは、オレの心を溶かしていった。
「どっちへいったらいいんだ」
オレは、スライムベスに好感を抱いていた。ここで初めてオレに真面目に話しかけてくれた奴。そして…笑顔が可愛い。
「会場はこっちです。じゃあ………れっつ・ごー!」
スライムベスは、とても元気に言った。
 オレも、生まれて初めての笑顔で言った。
「…れっつごー」
(PC)
ファっち、新作乙。

ひとくいばこ君、勘違い乙(笑)
嫌われてたわけじゃなかったんだね。よかった、よかった。

あの借り物競走が伏線になってたとは…。さすがfaddy先生!次はソロモンの妻の話かな?wktk


faddy先生の作品が読めるのは、ジャンプ…じゃなくて、「DQ-windom」だけ!
(PC)
36 faddy◆FqvO
>>35 トン。
人食い箱は、最初は普通の印象だったが、怒鳴ってしまったせいで嫌われ者になってしまった…という設定。つまり、みんなが人食い箱を受け入れるとは限らない…
借り物競争は別に伏線だったわけじゃないんだけど、楽しそうな話の裏にこんな話があったら…と思って書いてみた。
あと、ホントはもっと続ける予定だったんだ。会場に出て、スライムベスの告白を見て…でも、ここできったほうがものがたりとして見やすいと判断した。
最後に…もう二つだけ、投稿しているサイトがある。
(PC)
37 黒崎
今回の話は好きだなぁ(^^)やっぱり周りの人(モンスター)の本当に思ってる事はよくわからないから、自分で勝手に嫌われ者と勘違いしてしまう…ってキャラ
昔の自分がそうだったからなぁ(笑)
そしてその勘違いに気付かせる存在の大事さ!
やっぱり話すって大事(^^)

なんか結局何が言いたいかよくわからなくなったけど今回の話は好きです。
(SH903i/FOMA)