1 ビーチ

ワールドトリガー2

 「よー、くまちゃん。今日も相変わらず元気だねえ」
 迅が熊谷友子のお尻を触った。
 ボカッ。
 いつもどおりの鉄拳制裁。
 「いい加減にしなかったら次こそほんとに訴えますよ?」

 「くそー、何とかできねえかなあ」
 迅は熊谷のプロフィールを見た。
 「これだ!」

 「よー、くまちゃん。今日も元気だねえ」
 迅が話しかけてきたので熊谷は身を硬くした。
 ドサッ。
 迅が段ボールの箱を置いた。
 「その中にまたいつものぼんち揚げが入っているんですか?」
 「ほれ、このとおり」
 開けてみると中身は大量のりんごだった。
 「くまちゃん、りんご好きだろ?」
 「い、いただきます!」
 熊谷は大好物のりんごにかじりついた。
 がりがりがりがり。

 ジャー。
 女子トイレから顔を青ざめさせ、体を前かがみにして片腕で腹を押さえた熊谷が出てきた。
 「うう・・・食べ過ぎたわ・・・」
 りんごを食いすぎると下痢をするものだ。
 さすさす。
 「きゃあっ!」
 迅がさっきまで大噴火していた熊谷のしりをなでた。
 「うう・・・元気だったら殴れるのに・・・」
 下痢で弱った熊谷には鉄建制裁ができなかった。
 ギュルル。
 「ううっ、また来たっ!」
 熊谷はさっき出てきたばかりの女子トイレに逆戻りしようとした。
 が、
 ドシン。
 その前に迅が立ちはだかった。
 「ちょっと、どいてくださいっ」
 「俺のこと訴えないっていうんだったらどいてあげるけど?」
 「ううっ」
 熊谷は一生懸命迅をどかそうとぐいぐい押した。
 「どいてっ!どいて頂戴!」
 もう限界だった。
 いますぐにでもトイレに飛び込まなくてはがまんできない。
 「じゃあ契約する?」
 「ううっ!」
 熊谷は迅の手をつかんで引っ張ってどかそうとした。
 「ううっ、ううっ!ああーっっ!!」
 ぶりぶりびちゃびちゃ。
 
 「うっ、ううっ・・・」
 茶色い海の上に足を開いて座り込み、うつむいて泣く熊谷。
 「お前が漏らした瞬間はばっちり写真に収めたからな、もし俺のこと訴えたらばらすぜ」

 そしてもう一人のセクハラ被害者にターゲットを絞った。
 「ふむふむ、沢村さんの好物は甘栗か・・・」
[作者、登場人物、概要]
迅、熊谷