塩見 鮮一郎公式 掲示板
過去ログ4661
2025/5/2 15:15
▼滝川魂の花道B
最後に白く残る、自分の骨を想像してみました。
今度こそ今度こそ、骨となる自分は、バーバーの入れ歯になれるかもしれません。
死ぬ前に観る自分の映画は、魂の花道のよう。
恋や愛は、道徳や理性で説明できぬ不条理な上でも成り立つこと。だからこそ、芸術の世界に親しんだ人生。生きているうちは夢だ、と言っていたのはシェイクスピアでしたか。
あとになって何もしなかった親戚たちが、バーバーのおこないをしたり顔であげつらい、哀しげに首を振るのは簡単なこと。
私の人生を高みに押し上げ、どろどろの地を這う孤独に落とし、心を戸惑わせ、美しい幻を見せてくれたバーバー。これ以上の大演出家はこの世にいません。
最後に観る映画で、私は花道をゆけるのです。
塩見先生、私の人生で最初にこの物語を読んでくださいましたのは先生です。
本当にありがとうございました。感謝しております!
Up 5/2 15:15
▼滝川魂の花道A
今からMRI内で観る映画は、死ぬ前ではないので予告編といえるかもしれません。
走馬灯の主人公は、まず母がでてきました。泣き笑いしているようで、周りと調和しない、全てが2秒くらいずつズレる表情は、紛れもなく母でした。心に残る、存在が現実とズレ、観る者に残像を刻む魅力的な笑顔。怯えながらも、ママごめんね、私はやっと言葉が出ます。胸がかき氷みたく砕け落ちそう。
母とは、DNAレベルの支配者か。命を産む最終的なジャッジをしたのは彼女の罪。その罪にありがとうと祈るように伝えます。
やがて、母の背後にスーツを着てネクタイを締め気取ったバーバーの像が浮かび上がってきます。ついに涙のまん幕が両目尻から流れおちてきました。
魂の重さは21gという説があります。死ぬ前と後で肉体の重さを測り、心臓が止まる際の発汗の量がそれではないかと専門家の間で話題になったそうです。
▼滝川魂の花道@俗世の合間を泳ぎつつ、おかげ様で歳を重ね、ここまで、人並みにご飯を食べられながら暮らしてこれました。
ふと先日、体調不良から人生初めてのMRIを受けることになりました。
それは少し好奇心のあることでした。なぜなら、ある映画監督が死ぬ前には、小さな映画を観られるよ、と言っていたから。その映画監督はマンション屋上から飛び降り自死しました。アドレナリンから走馬灯が巡るらしいと言っていましたが、彼は短い映画を観られたのかは不明です。
MRIのドームの中は、真っ白な世界で棺桶に似ていました。ガツーンガジャーンというひっきりなしの騒音は、まるで焼却炉に連れてゆかれるような気持ちでした。
アウシュビッツに行き覚えているのは、焼却炉からの匂いです。タンパク質の焦げた匂いは、戦後40年近くともまだ強烈でした。
▼世話人読書F早乙女朋子『バーバーの肖像』
バーバーと少女の関係性の逆転があっても、
作品におおきな乱れはなく、
さり気なく日常がすぎて行きます。
そのことで、悪徳の物語に堕すはずのところが、
静逸をたもちます。
老いた父たちは死に、娘たちは結婚します。
少女の心を満たしている
老紳士の優雅さはたもたれたのです。
そして、
このむずかしい「家族の肖像」を、結晶化することに成功しました。
HP
▼世話人読書E早乙女朋子『バーバーの肖像』
ネタバラシしなければ、批評になりません。
やがて少女は知るのです。
大事なバーバーが詐欺師で前科四犯で、結婚詐欺なども。
さらに、母を500万円で、材木商の鍋島に売ったのでした。
さらに少女にとって衝撃なのは、自分が鍋島の子と知ったことです。
なんという不思議な設定でしょう。
本当の父を嫌い、憎んでさえいたのです。
母を売ったバーバーを快いよい老人に思い、慕いつづけたのです。
HP
▼滝川鎌倉。乳母車の中は私です。
https://i.imgur.com/xBb5Ki3.jpeg