―紅海―

そこは夕暮れでも無いのに真紅に染まる海
様々な物が流れ着き、守るように水属性の強い魔物や怨霊が現われる
ファル・イデア・フォン・グレン
いや、凄いなって思っただけだ
(睨まれようとも気にせず、意思というか想いが強くて感心した事を抽象的に答えるも、気にするなとばかりに軽く肩を竦めて)
邪魔なんだよな
(ウザったそうに眉間を寄せて髪を払うと相手の方へと歩み寄って、海風で前にきた髪を掴むと見ながら呟き)
セリシアーシャ
……なぜ笑う?
(己の紡いだ言葉を受け入れられたは良いが、笑われるようなことを言った覚えはなく。しかし、何か恥ずかしいことを口にしたのかという恥ずかしさと不安から俄に頬を朱色に染めつつ睨んで。しかし、続いた呪文と表れた魔方陣。彼の巻き起こす風に金の巻き髪が揺れ動き、赤い光に目を細めて彼の姿を見つめているとその髪は彼の言う通りに長くなり。)
これは驚いた。本当に長いな。
ファル・イデア・フォン・グレン
…なら、お前に任せるよ。俺は与えられる側だからな
(そんな訳ないと断言されてしまえば一瞬は茫然と相手を見て止まったが、可笑しそうにフッと笑みを浮かべて)
…まぁ、それくらいなら…
(触るくらいなら良いと渋々といった様子で答えると長く息を吐き、目を閉じて集中を始め)
我が身に刻まれしは光より出でし闇の力
晋く虚空を伝いし言霊は悠久の眠りを呼び覚まし
深淵に揺蕩う戒め解き放つ

無音の魂滅招きし混沌の衝裂
其の力 我が身と成りて
赤誠の刃となり滅びの道を歩まん

六封方陣 六の五限定解除
(ゆったりとした口調で響く様な低い声で詠唱していくと、風が周囲を舞って身を中心とした地上に巨大で複雑な魔方陣が赤光を帯びて浮かび上がり。唱え終えて魔方陣が硝子の様に砕け散ると同時に髪が腰の辺りまで伸び、魔力も解放され周囲に影響を与える前に極力抑え込むと息を一つ吐いて)
セリシアーシャ
そんなわけないだろう?ファルに与えられるものも、感情も…今の私にとって、無くてはならないものだ。
(負担に、と聞けば心外だとばかりに大きく首を横に振って否定の意思を示し。)
…触れるくらいは、してみたいかもしれん。
(念押しされれば、本当に見るだけにされかねない勢いにに、その姿を見て触れられないのは嫌だと、考え直せばそう告げて。)
ファル・イデア・フォン・グレン
…あぁ、まぁ…お前の負担にならないなら…
(短く紡がれた言葉だが、側にと言われてしまえば弱く、己も望むものなので拒む理由もなく。だが甘えてばかりもいけないと、頬を指で掻きながら控えめに述べて)
違う姿って…。……髪をいじったり、しないな?
(一歩引いたが、また更に少し距離を取りながら髪を結いたいとか弄らない事を念を押して)
セリシアーシャ
義務など……私は…ファルの側に居られるのなら…。
(俯いていた顔を俄に上げれば視線だけを相手へと移し。彼との時間を作るための口実であれど、義務になどなり得ない。そしてなにより、義務などと思うこと自体があり得ないのだと思いつつも、そんな風にハッキリと言い切ることがどこか気恥ずかしく呟くに留めて。)
ふふ、そう嫌がるな。どうせ結わせろと言ったところで嫌がることくらい、私にも分かる。時には、普段と違う姿も見たい、それだけだ。
(彼が嫌がることは想定内で。見るくらいはタダのはずだと、笑みを浮かべたまま俄に首を傾けて。)