―果ての廃墟―

彷徨う死者の魂、魔物が溢れる
昔には栄えたであろう町の哀れな傷痕
メルティーナ
ううん、大丈夫。ありがと。あれだけの量を一気に、なんてすごいよねぇ。
(謝罪に対しゆるりと首を横に振ってから解放された双眸で相手を見上げ、様々な感謝を込めて礼を告げ。どのような手段を使ったのかは解らないが逃げ回るついでに多少倒した程度の己とは異なる相手の力に感嘆した様子で瞳を輝かせ)
っふふ。本当、最低よ!なーんて、あそこで手を引いてくれなかったら思ってたかもね?
(わざとらしい芝居に肩を揺らし此方も普段より高い声音で相手の演技に同調する台詞を紡いでみせ、間を置かずにいつも通りの声と悪戯な笑みで)
レイナス
俺一人じゃ無理だったよ。……お恥ずかしながら。…あ、っと悪い。ビックリしたよね
(悍ましい光景に双眸を細め、しかし口調は普段のものを崩さぬように努めて。かなりの数を取り込み標的を失い空を掴み始めた手がズルズルと扉の中へと消えていけば、僅かながら抵抗を見せた相手を解放して。剣を持たぬ、回していた手を挙げ謝罪をしながら肩を竦め)
あんな敵だらけのとこに放り込むとか、なんて男なの!最低よ!…とか、思ってないかな
(魔力を消費し頬を伝う汗を手の甲で軽く拭い、ぽつりと残る食らいきれなかったゾンビを見やりつつも、わざとらしく上ずった女性を真似た声色で演技をしてみて。間を置いて地声に戻すと、笑い混じりにも心配をして)
メルティーナ
やだなぁ、実際にやっつけてくれるのはレイナスなんだから。…わっ!?
(既にすっかり終わった気で謝罪など必要ないのだと気の抜けた笑みを浮かべるも、「休憩」と称された予想外の行動に驚きの声を上げ。反射的に小さく抵抗を見せたのも一瞬のことで、大人しくされるがままにしながら息を整えるために深呼吸を繰り返し。見えずとも肌で感じる何かや減っていく魔物のことは敢えてあまり意識しないように、苦笑混じりに零した言葉には疲労に加えてある種の達成感も滲んでいて)
ひとりであんなにいっぱいの相手したの、初めてかも。
レイナス
お疲れ様。それと、ごめんね?…ほら、少し休憩。
(得物を失いながらも奮闘し、迷う事無くこちらに向かい手を取ってくれた相手に労いの言葉を掛け。そしてパンプスを履いても自分には届かないと思われる身長差の相手の視界を遮るべく、腕を回そうとしつつそれを「休憩」と告げて。そうしている間に隣にまがまがしく構える門の扉が開き。視界を閉ざす事が出来なければ、無数に伸びた手が空腹を満たすかの如く、次々と魔物を虚空の中へと引き摺り混んでゆく光景が映るだろうか)
メルティーナ
あは、間一髪…。
(狙い通り魔物を貫いた刃はそのまま地面までをも貫いてしまい、引き抜くことは諦め咄嗟に身を退けば先程まで自分の居た場所に魔物の鋭い爪が幾つも殺到するのを見て自然と頬が引きつり。剣に代わりホルスターから引き抜いた拳銃を用い相手の言葉通り数を減らすことは一切考えずにただ動き回り、少し息も上がり始めた頃に呼ばれた己の名に迷うことなく敵に背を向け駆け出せば相手の手を取り)
っは……も、疲れた…
(相手の元へ戻ったことで張り詰めていたものが解けてしまいフライングでぐったりと脱力し)
レイナス
くれぐれも無理はしないでね。……走り回ってくれてるだけでも良いから、さ…
(相手に無理をさせるわけにはいかず、別の案を挙げてみるがそれもあまり変わらぬものであり語尾を濁し。焦りを拭い剣を祈るように真っ直ぐ立たせて、先ほどと違い魔物の妨害がない為に術に意識を集中させ。数分の間、詠唱を終えて術を完成させると己の隣に地面を割って現れたのは、扉の閉ざされた不気味な門で)
……メル!巻き込まれたら危ないから、戻っておいで!
(気を引く為に動いてくれたであろう相手へ聞こえるように声をはり、腕を伸ばして。相手がそれを取るならば自分の元へ引き寄せようと、そうでなければ避難するようにと促して)