54 友希◆RENN
〜船旅〜2007版

滝の洞窟。
二人が再会した山奥の村から、少し北に行った場所にある巨大な鍾乳洞。
フローラと結婚するために必要な水のリングが眠っていると言われている場所。
侵入者を阻むかのように待ち受けている巨大な滝と入り組んだ洞窟を抜けて、ついに2人は水のリングを手に入れる事が出来た。
サラボナへの帰り道、二人の間には深く重い沈黙が降りていた。
サラボナへ近付けば近付く程に深くなる沈黙。
そんな沈黙を破ったのはアベルの一言だった。

「…ついに水のリングも手に入れちゃったな。」

意識的に言ったというよりは、つい口にしてしまったという感じの言葉。

「なに暗くなってるのよ?炎のリングに続いて水のリングも手に入れて、あとはサラボナに戻るだけじゃない。ここは喜ぶ場面でしょ?」

ちょっと冗談っぽく言ってみた。
表向きはアベルをからかうため、でも本心はアベルの気持ちが知りたくて。
(W42CA/au)
55 友希◆RENN
〜船旅〜2007版 2

アベルが結婚するために水のリングを探しているって聞いた時、何故だか胸の奥がちくってした。
アベルは幼なじみだし、私の方がお姉さんだし、アベルに好きな人ができて結婚するなら喜んであげなくちゃいけないのに…。
なんでだろう?胸が…すごく痛いよ。
時間が経つにつれてどんどん苦しくなるの…。

「ビアンカ大丈夫?顔色がよくないよ?もしかして久しぶりの冒険で疲れちゃった?」

船の舵をとっていたアベルが私の所まで降りてきてくれて、心配そうに私の顔を覗き込んだ。

「えっ…あっ何でもないよ!大丈夫、大丈夫…。」

アベルの顔が近づいた時に、自分の顔が赤くなるのを感じた。
何だかよく分からないけどドキドキして恥ずかしくて、大袈裟に手を振りながら返事をしたの。

「そう?ならいいけど。変なビアンカ。」

アベルが不思議そうな顔をした後、にこっと笑いかけてくれた。
子供の頃から変わっていない、アベルの屈託のない無邪気な笑顔。
(W42CA/au)
56 友希◆RENN
〜船旅〜2007版 3

アベルはあの時から、また一緒に冒険しようねって指切りした子供の頃から全然変わってなかった。
それがすごく嬉しかったの。
お母さんが死んじゃってからの辛い生活。
それでも頑張ってこれたのはお父さんやお母さん、そして何よりアベルとの楽しい思い出があったから…。

「ねえアベル。本当に…本当に…フローラさんのことが好き?」

船の甲板で遠くを見ていたアベルの背中に向かって投げかけた。
心の中に初めて生まれた不思議な気持ち。
言葉では上手く表現できないけれどあったかくてドキドキして、でも切なくて。
その気持ちが私の背中をぽんって後押ししてくれた。
自分の気持と向き合う勇気を。
自分の気持を伝える勇気をくれた。
(W42CA/au)
57 友希◆RENN
〜船旅〜2007版 4

びっくりした。
ビアンカに言われた事を僕も今考えていた。
ビアンカには僕の考えてる事がわかるのかな?
山奥の村で再会して、久しぶりに沢山話をした。
僕達の小さな冒険の後から今までの事を。
父さんの事や母さんの事も全部。
ビアンカはまるで自分の事のように泣いてくれた。
この時に僕の気持は決まっていたのかもしれない。
いや、もしかしたら父さんに連れられてサンタローズに行ったあの日から…。
でもあの時は自分の気持に気付かなかった。
それくらい僕らは幼かったんだ。
そして、その気持を忘れてしまうほどの時間が流れた。
色々あったし、心が揺れる人とも出会った。
でもビアンカといると安心する。
理由は分からないけど、心が優しく包まれているような心地よい気持ち。
(W42CA/au)
58 友希◆RENN
〜船旅〜2007版 5

守るだけじゃない。
共にお互いを助け合い、共に高め合う事の出来る女性。
僕がこれから進む道は、きっと厳しいものになる。
だからこそ、僕はキミと一緒に歩きたい。
これから僕らが辿る道がどんなに困難な道のりだったとしても、二人だったら乗り切れる。

僕は振り返ってビアンカを見つめた。
そして言ったんだ。

「ビアンカ。僕は…。」

心地よい風が吹く船上の旅。
そよ風に言葉を乗せて、今君に一つの想いを。


END
(W42CA/au)
59 友希◆RENN
連続投稿は疲れる(´・ω・`)

次はなっちの番かな(σ・∀・)σ(笑)
(W42CA/au)