36 友希
『〜船旅〜』

滝の洞窟。
2人が再会した山奥の村から北に行った場所にある巨大な鍾乳洞。
フローラと結婚するために必要な水のリングが眠る場所。
侵入者を阻むかのように待ち受けている巨大な滝と入り組んだ洞窟を抜け、ついに2人は水のリングを手に入れることができた。
サラボナへの帰り道、2人の間には深い沈黙が降りていた。
サラボナへ近づけば近づくほどに。
そんな沈黙をやぶったのはアベルの一言だった。

『…ついに水のリングも手に入れちゃったな。』

意識的に言ったというよりは、つい口にしてしまったという感じの言葉。

『なぁに?フローラさんと結婚するために探してたんでしょ?頑張って見つけたんだから喜びなよ。』

ちょっと冗談っぽく言ってみた。
表向きはアベルをからかうためで、本心はアベルの本当の気持ちが知りたくて。
(W11K/au)