1 メルティーナ

運び屋「Azure」9

白を基調とした上品でシンプルな造りの小さな家。白で揃えたポストが控え目に設置されている。
玄関を潜って直ぐに仕事の受付も兼ねたリビングがあり、テーブルとそれを挟む様にソファが2脚、テレビに木製の本棚と飾り棚、仕事机がある。その他1階にはバスルーム、トイレとあまり使われた形跡のないダイニングキッチン。
2階の半分を占めるのはルーフバルコニー。残り半分は自室と今は物置と化している空き部屋になっている。自室には大きめのクローゼットとベッド、テーブルと椅子が2脚に小さな引き出しの多いタンスがあり、バルコニーへと通じる大きな窓は常に鍵が開きっぱなしになっている。

■ 手紙・郵便物受付可 ■
35 メルティーナ
【入退室】

(のんびりと足を進めて帰宅を果たし確認したポストの中には妙に膨らんだ封筒がひとつ。取り出してみれば押さえ付けられくぐもった音が微かに耳に届き、首を傾がせながら自室へと。一方の椅子に持っていた荷物を下ろして自分はもう一方に腰を落ち着け、封を切って傾けた中から澄んだ音を響かせ掌の上へと転がり出てきた物体に目を瞬かせつつ一旦テーブルに乗せておいて先に手紙に視線を落とし)ーー私に、かあ…。えへへ。キミ、可愛いねえ。(読み終えた手紙を丁寧に元に戻してテーブル上のキーホルダーと入れ替えると丸く可愛らしいフォルムの猫を目線の高さまで持ち上げて紫の混じる青い瞳と暫し見つめ合い、緩みきった表情で笑いかける姿は子供っぽく喜びに溢れ。返事を認める間再びテーブルの上にちょこんと位置していた猫は、部屋の主の外出時にはチリンと鳴いて行動を共にすることになるだろう)
34 レイナス
【入退室】

(共に料理に挑んだ日から一週間程。身を縮めずとも出歩ける春の夜風もまた心地好く、周囲の音に耳を澄ませながらゆったりとした歩調で相手の家を訪れて。少し歪な形の封筒をポストに落とせば小さくチリン、と澄んだ鈴の音が鳴り)

『To.メル

この間はありがとう。あのパスタ、忘れない内にと思って一人でさっそく作ってみてさ。そしたら何か違うっていうか…君とつくった楽しさが何より一番の隠し味だったんだと思いました、まる。
手紙といっしょに入れたのはこの前渡しそびれちゃった買い出しのお駄賃代わり。メルに似てたからついつい手が伸びちゃって……バカにしてるわけじゃないからね?

また今度、遊んでくれたら嬉しーデス。東国文化の雑貨屋さんも案内してもらわなきゃ。いつとは決めないけど、約束…したと思ってていいかな?

そうそう例の狐さん、聞き込んだらすぐに答えが見つかりそうで自力で探してみることにしたよ。宝探しみたいで毎日わくわくしてる。
見かけても笑わないでね?それじゃあ、また。楽しかったよ。

By.レイナス』

(手紙に同封されているのは、ころんと丸い猫の形をした鈴のキーホルダーで。白毛に紫がかった青目、魚に代わってチョコがけのドーナツを咥えたその顔は無表情ながら、心なしか幸せそうに見えなくもない。共に名入れされたクリアーのタグには相手の名前が刻印され、文面と合わせれば相手を意識して選んだことが伝わるだろうか。申し訳程度に上がっている短い右手が細やかな幸運を招いてくれるかもしれない)
33 メルティーナ
【入退室】

(足取り軽く自宅まで帰ってくると眠たげに欠伸を漏らしつつポストを確認、見つけた見覚えのある封筒に気分は上昇し弾むような歩調でリビングに向かうと座るが早いか封を切り。最後まで読み終えると相手の名に添えられたイラストと暫しにらめっこし記憶の引き出しをひっくり返してはみたが眠気も強い今は上手く頭が働かず、緩く首を振って襲い来る睡魔と戦いながら立ち上がりのろのろと階段を上り。その後は自室で一度睡眠をとり、ささっと家での用事を済ませてから改めて外出することになるだろう)トマトのパスタ…あっさり…で、緑色。…んー、とりあえず1回寝てから考えよ…。

【優しいお言葉の数々、ありがとうございます+返信ではなくこの場で反応することをご容赦くださいませ。当日はどうぞ急がずのんびりとお付き合いいただければ有り難く…娘共々楽しみにしております!】
32 レイナス
【入退室】

(今度はしっかりと地を踏みしめ小さな家の前へとやってきて。ポストに前回同様ネイビーブルーの封筒を落としてから手紙に書いた内容を思い返し悩むよう腕組みをして、言い出しっぺである自分に料理に関する知識が皆無であったと考えが至れば、来る約束の日に備え情報収集へと出掛けようか)…食べたことはあるんだけどなー…道具って何が必要なんだろ…?闇くんに訊いてみよっと。

『To.メル

あんまりガツガツしてる方がオトメゴコロとしては複雑なんじゃない?…なんてね。手紙、無事に届けられてたみたいで良かった。返事もありがとう。

夜に帰すのも悪いしお昼ご飯にしようか。きっちり時間は指定しないけど正午前、腹空かせていい子に待ってるよ。必要そうな道具はこっちでそろえておくし…厚意に甘えて材料のおつかいはお任せさせてもらおうかな?
あー…それで、お腹と相談した結果パスタが食べたいと判明しました。それなら俺も手伝えそうだし…トマトベースの、あっさりしたヤツ。メルの失敗は俺の失敗だしその逆もしかり!ここは連帯責任ってことでよろしく。

それじゃ当日、楽しみにしてるね。
(前回と同じく"By.レイナス"と書き出しの筆圧が強い右上がりの文字の横には、お皿と思わしき楕円上にくるくると他方向に描かれた曲線。赤いペンで足された角ばったものはトマトを、緑のペンはバジルを表現したつもりであるが絵面で伝わるかどうかはかなり怪しい仕上がりとなっている)』

【こんにちは、約束の日まで時間がありましたので返信ペースについてはどうかお気になさらず^^*紙面では昼間を指定しておりますが、此方の入室も夜になるかと思われます。極力先に待機できるよう努めますので当日は宜しくお願い致します(礼)リクエストに関しては失敗でも成功でも、また画力がお粗末ゆえの勘違いでこれじゃない…となっても、出来映えにこだわらずやりとりを楽しめたらと思っていますのでメルちゃんどうか気張らずに…(笑)それでは、来る日を楽しみにしてますね+】
31 メルティーナ
【入退室】

黒い、羽根?(玄関先に降り立つと最初に目に入った羽根にきょとりと目を瞬かせ、そっと取り上げ暫し眺めた後とりあえず持ち帰ることに決め続けてポストを覗きその中身と共に手にして帰宅を果たすとソファに腰を下ろし。羽根はテーブルの隅に下ろしてからまずは包みに添えられた白い手紙を開き、名前はなくとも差出人をすぐに察して己の悪戯が予想以上の効果をもたらしたらしいことに満足げに口角を吊り上げたものの、読み終える頃には些かやり過ぎたかもしれないと小さな後悔を胸に恐る恐る箱の中を確認し、見覚えのある包装ではあるが実際に口に運ぶまでは少し緊張の面持ちで、しかし口内に広がる素直な甘味に途端に破顔して)美味し…。あは、ほんとにフツーに優しいお兄ちゃんだ。(小さな感動を噛み締めるように呟き言葉を疑った自分を恥じるように苦笑いつつ残りは大切に元通り蓋をして今度はもう一方の封筒を手に取り、美しい夜空を映したそこに記された名前に少しだけ安堵の色を浮かべて)わあ、一緒に……、手際の悪さがバレる…!(内容に目を通すと唇は自然と笑みを作り、意識は先へ先へと進み早くも目を輝かせたかと思えばはっと瞠目して頭を悩ませるという落ち着きのなさを発揮し。わたわたと返事を書き上げると早足に再び家を出て背に表した翼を羽ばたかせ)