1 レイナス

街外れの宿『Lucas』

エントランスを抜けると正面にフロントデスク。その両側から一対のカーブを描いた階段が伸びている。向かって右が一般宿泊者エリア、左が長期宿泊者エリアとなっており、目立たぬ立地ながらそれなりに栄えている様子。天井はドーム型の硝子張りで随所に星のモチーフが散りばめられたレトロな雰囲気の宿屋。

『Room V』
円形に伸びる廊下の手前から三番目に位置するレイナスの生活空間。シングルベッドの傍らにカフェテーブル、愛用のバッグを引っ掛けた椅子が一脚置いてあるのみで、手狭なキッチンスペースもグラスがぽつんと置かれているだけ。小型冷蔵庫には日持ちする食材をストックしている。個室シャワーとトイレ付き、空調は一定。

▽手紙・郵便物の受取り可
様々な種族を配慮し昼夜問わず常駐しているフロントスタッフに預けるか、入り口左側にあるロックつきのポストに投函可能。後日当人の元へ手渡される。来客用のドアノッカー有り。
22 レイナス
【置きレス】

……っとと、無茶じゃない無茶じゃない。ちゃんとストップしたくなるかわいさだったから。…あ、でもそういう反応も良い……って、なーんか俺使いが荒くなってきてない?(合図を聞いてすぐに傾けた手首を戻し相手の決断が早かったおかげだろう、程好い量のオリーブオイルがフライパンに注がれ緩やかに温度を上げていく。己のリクエストに応じて作った僅かに甘えたような声音はしっかりと耳に届いており、素直な対応が嬉しいやら面白いやらでクツクツと喉奥で笑いを堪えるものの続く言葉がどうにも笑いを含んでしまう。しかし伸ばされた手に小瓶を渡さんと相手に視線を移してみれば、淡く頬を染めて弱々しくも不服を訴える姿はいつも明朗な彼女からは物珍しく見え思わず本音が一言。好きに揶揄ったお返しであるか、代わりに手中にやってきた木べらの柄を反射的に握り、料理に取りかったばかりの遠慮がちな受け答えとの変化を指摘はするが単なる冗談の延長で。すぐに鼻唄混じりに後ろで交差させた足で軽くリズムでも刻みながら機嫌よく炒め始めれば、ニンニクの香りが立ったところでカッティングボードを持ち上げてフライパンに寄せ、木べらを使ってトマトを投入する姿は「なんとなくそれっぽい」はず。食欲をそそる色と香りの中、漸く文香たるお洒落アイテムの正体が判明しその名称を反復した後に次いだ申し出は男一人で立ち入るには躊躇いを覚えるが故に遠慮なく請ける事として。そんなご機嫌調子も不意にパスタの状態を訊かれ、相手を構いたいあまり任務を放棄した隊長はしまったと露骨に表情に現れ視線は外方に)…びゃくだん?聞いたことない名前…ビャクダン、ね。うん、覚えた。案内までしてもらえるなら是非とも。この前ちょっと恥ずかしかったんだよねえ………、あ。あー…多分5分前、くらい?じゃないかな…?
21 メルティーナ
【置きレス】

っわ、ありがと…って、かわいく?ーーす、ストップっ!…無茶ぶりだ……。あ、そのままニンニク炒めてくれたりとかして?(相手の声が聞こえて初めて己の指が宙を掻いていたことに気付く有り様ではっと意識を呼び戻せば思わぬ注文に目を丸め、戸惑っている間にもフライパンに注がれる液体は少しずつ着実に量を増やしていき慌てて制止を告げる声音はいつもよりも少し高く柔らかく甘えたものを意識して。その瞬間は勢いだったが冷静に振り返れば頬も淡く染まるというもの、力無く呟きを落としながら役目を終えた小瓶を受け取ろうと手を差し出し、無事に己の手に渡ったならば代わりに木べらを押し付けるようにちゃっかりその後の作業も任せてしまえないかと。己の実力がプロには遠く及ばないことは重々承知、過大評価は擽ったくも折角の評価を下げてしまうのも勿体なく感じて畏まった一礼をしてみせて、気恥ずかしさを紛らすように話題を文香へと移し想像以上の効果を発揮したらしい嬉しさににこにこと笑みを湛えさも自分の手柄だとばかりに自慢気に紡ぎ。ふと自分では茹で時間の確認も何も失念していたことに思い至り今度は菜箸片手にパスタ鍋の前へ移動し)えへへ、お褒めに預かり光栄デス。あれはビャクダンっていう香りで、お店は大通り商店街からちょっとだけ外れたところにあるの。良かったら案内しよっか。…パスタっていつから茹でてたっけ?
20 レイナス
【置きレス】

へえ…凄いな、プロみたいだ。…ああ、うん気に入った。自然の中に居るみたいな、心が落ち着く不思議な香り。薄れてきたから何となくそれっぽい店探してみたんだけどさー、結局メルに訊くのが一番早いと思って。(半ば余計なお節介とも取られそうな言葉にも笑みと共に礼が返されれば、面映ゆさに少しばかり眉尻を落とした微笑を浮かべて緩く首を横に振り。そして己のイメージとは異なる状態のニンニクをどうするのだろうと興味深げに手元を注視し、切る目的の道具の切れない面を使用するという新技に瞠目しつつ、此処からではみじん切りの粗さは見てとれずに小気味好い音だけを聴けば他者の料理風景などほとんど見ることの無かったこの男が感動するには十分であり。意識の全てをそこに向けていたからか続く文香に対する質問にやや後れて肯定し、柔らかな紙から少しずつ消えていく香りの名残を追いかけてはみたものの名を知らぬまま口頭で伝えるのは不可能に等しく断念した経緯を語って肩を竦めて。そうしながら暫しの休息は終了、寄りかかった身を起こしぽつりぽつりと聞こえてくる独り言で次なる手順を把握しては、さ迷う指先が求めるダークグリーンの小瓶を横から拐い蓋を開け。再び鍋の前、相手の右隣に立ちフライパンに向けてそれをゆっくりと傾けては楽しげに無駄な条件つきで制止の声を合図にすべくとろりとした液体を注いでいこうか)いいよ、俺がやる。ちゃんとストップー!ってかわいく言ってね?はい、いきまーす…──
19 メルティーナ
【置きレス】

……ん、そっか、そーだね。意識するのとしないとのじゃ違うかもだし。ありがと!…あ、忘れてた。文香、気に入ってくれた?(必死に叩き込んだ脳内のレシピを辿り今後の段取りを思い描きつつ包丁の腹でニンニクを押し潰してから皮を剥き、お世辞にも手際が良いとは言えないがそれなりのリズムを保ってみじん切りにしていく様子からは多少の料理経験は見てとれるかもしれない。自身の性格に平和な街が合わさってこその現状で改めるのは難しくても心配と言う言葉が耳に届くと嬉しいやら照れ臭いやらで一旦料理の手を止め包丁から手を離して、くるりと相手を振り返りきちんと目を見て心からの感謝を伝えるだけ伝えてはにかむとすぐに元通りカッティングボードに向き直って料理を再開し。言われて漸く手紙の文面を思い出しすっかり頭から抜け落ちていた事実にばつの悪さを覚えるのと同時に未だ聞いていない感想を期待して問いに問いを返す形をとって。本来もっと細かくなるべき食材は意図しない粗みじんになってしまったものの自分としては及第点、包丁を使ってフライパンの中に移動させると一段落した心地でひとつ呼吸し、続いて真剣な面持ちで独りごちながらティーワゴンに腕を伸ばしたのだが頭の中は更なる先のことで一杯になっていて指先に意識を向ける余裕がなく暫しの間油に触れられずにふらふらと空を切ることになるだろう)えーと、次はオリーブオイルで火にかけて…それから…トマト、だったよね……うん、大丈夫なはず…。
18 レイナス
【置きレス】

だね。おっけー、パスタはお任せあれ……、?…んん……これでよし、と……(己もまたポジティブであると自覚出来る程には肯定的であるが今は相手の前向きな姿勢や言葉が頼もしく、濁りのない返事をしてはひとつ大きく頷いて。入れ代わるように今度は己がワゴンの前に立ち長物とあってすぐにパスタの束を見つけて抜き取り、鍋のもとへと歩み火をつけて間もなく沸騰するまでの間、親切に一人前ずつ括られてあるそれを二つ取り出して眺めてみれば少々物足りないようにも感じられる。ちらりと隣を窺いはしたものの隊長と任された要らぬ見栄が邪魔をして再び鍋と向き合い三つの束を投入すれば、後に二人前を想定して用意したフライパンにギリギリ収まるかどうか怪しい大量の麺が茹で上がるだろう。そんなことは露知らず、鍋の番をしながら一旦手持ち無沙汰となった身の半分を軽く壁に寄り掛からせて、漸く落ち着いて相手が料理をする立ち姿でも眺めていようと。人と難なく打ち解けてしまうのであろう相手の魅力は長所であるがどこか自分を軽んじているようにも感じられ、それが杞憂であれば良いと願いつつもやんわりと己の思いを伝えてから、ぱたりと声音に快活さを戻して軽く握った手で手のひらを叩けば)…それもそう、か…?平和だからね、それで良いのかもしれない。でも心配する奴もここに居るって事、覚えておいて。きっとお兄ちゃんもね?……あ、そうそう!「訊きたいこと」、きいてもいーい?
17 メルティーナ
【置きレス】

食べられるものしか使ってないんだから、食べられるものしかできないはず!私たちになら出来る出来る。ね?うん、包丁使いたいー。じゃあパスタはレイナスたいちょーに任せたっ。(手を腰に口の端をにいっと上げて高らかに宣言する様は冗談めかしていながらも本心であり、相好を崩した相手と視線が交わったなら笑みに僅かな照れを覗かせつつ握った拳を肩の高さ辺りまで掲げ半ば自らに言い聞かせる意味も込めて呪文のように繰り返してからウインクを向け。相手の了承が得られたことで紙袋に向き直り長く残ってしまう香りが最大のネックながらも誘惑には勝てずに買ってしまったにんにくを取り出し、どちらを取るのか悩ましげに眉を寄せたまま譲ってもらったスペースに収まれば言葉に甘えて茹でる作業は一任してしまおうか。半分は同意を得られた気分で数度頷き、残る半分には大人しく頷いてしまえれば良いのだが確約できないのが自分でも悲しいところ。小さく零す言い訳をさっさと流してしまおうと意識を手元に戻してわざとらしくも明るい声を上げ、一玉から一番小さそうな一片を選んでカッティングボードに乗せ)そーそ、足元ばっかり見てたら楽しいこと見逃しちゃうもん。ほら、ちょっと喋ったらもう知らない人じゃないし……。よし、ニンニク、ちょっとだけ入れちゃおーっと。