6 セリシアーシャ
動じずに受け入れ、抱き締め返してくれることに、安堵する。
肩の力を抜いて小さく息を吐きだすと、ようやくその紅い瞳を見上げた。
「…おとなしい私は、ファルの気に召さないか?」
「いや?抱き締めたくなる…。」
己から問うたは良いが、予想外な答えが返ってくる。
思わず驚きの表情を浮かべたが、否定の言葉で無かったことは、素直に喜べることで、直ぐに微笑みを返した。
「それなら、良かった。」
本心からの言葉に、ファルの表情が変わる。
普段、殆ど表情や感情を大きく揺るがすことの無い彼が、時々見せる瞬間。
とはいえ、どのタイミングで、だとか、そういったことまでは理解していない。
ただ、私の言葉に反応しているのだと思うと、どうしようもない、名前のつけがたい想いが沸いてくる。
「らしくないと言われたら…どうしようかと…。これで心置きなく、ファルに触れられる。」
心から思って、そのままを伝えると、ファルは困ったように笑う。
何かいけなかっただろうか、と不安が過るのと、ファルの言葉と、どちらが先だったか……。
「……………可愛いこと言うなよ…」
言葉の選択はそれぞれだが、想いは同じであることに変わりがないようで、ファルはゆっくりと唇を寄せる。
可愛くなど無い。そう反論だけは相も変わらずしようとしたが、唇が寄せられて、最後まで告げることはできなかった。
肩の力を抜いて小さく息を吐きだすと、ようやくその紅い瞳を見上げた。
「…おとなしい私は、ファルの気に召さないか?」
「いや?抱き締めたくなる…。」
己から問うたは良いが、予想外な答えが返ってくる。
思わず驚きの表情を浮かべたが、否定の言葉で無かったことは、素直に喜べることで、直ぐに微笑みを返した。
「それなら、良かった。」
本心からの言葉に、ファルの表情が変わる。
普段、殆ど表情や感情を大きく揺るがすことの無い彼が、時々見せる瞬間。
とはいえ、どのタイミングで、だとか、そういったことまでは理解していない。
ただ、私の言葉に反応しているのだと思うと、どうしようもない、名前のつけがたい想いが沸いてくる。
「らしくないと言われたら…どうしようかと…。これで心置きなく、ファルに触れられる。」
心から思って、そのままを伝えると、ファルは困ったように笑う。
何かいけなかっただろうか、と不安が過るのと、ファルの言葉と、どちらが先だったか……。
「……………可愛いこと言うなよ…」
言葉の選択はそれぞれだが、想いは同じであることに変わりがないようで、ファルはゆっくりと唇を寄せる。
可愛くなど無い。そう反論だけは相も変わらずしようとしたが、唇が寄せられて、最後まで告げることはできなかった。
7 セリシアーシャ
変わりに静かに目を閉じて、己のそれを重ねて堪能する。
この逢瀬の時間は、そう長く残っていないだろう。
それでも、彼の温もりを感じてしまえば手離しがたく、深くなる口づけ。
シンプルな部屋に、舌が絡み合う度に響く水音。
俄に頬を赤らめるも、抱きついていた腕の片手を移動させ、彼の頬を包むように触れる。
「ん、…はぁ…」
息継ぎの合間にうっすらと目を開ける。
目の前には紅玉の瞳。
「もっと…。」
視線が絡まれば、キスをねだる言葉。
…無意識だった。
こんなこと、言うつもりではなかったのに。
はしたない女だと思われたろうか。
一抹の不安が胸を過る中、彼のガーネットのように深い色の瞳が閉じられる。
まるで私の言葉に答えるように、深く、長い口づけは続いた。
「………今回の誕生日は、色々と忘れられない日になるな。」
お互いが熱い吐息を溢して、唇が離れていく。
随分と深いキスに、私の口の端からはどちらのものか分からない唾液がこぼれていた。
ファルは笑みながら呟いて、私の髪を撫でる。
その心地よさに目を細目ながら、薬指でつぅと、自らの顎を伝うそれを拭う。
「……おめでとう。」
“忘れられない”などと言われれば、彼にこと関しては、特に単純な私。
嬉しいと己もまた微笑めば、すでに終わってしまったものの、伝えたいと思って祝いの言葉を、漸く伝えた。
この逢瀬の時間は、そう長く残っていないだろう。
それでも、彼の温もりを感じてしまえば手離しがたく、深くなる口づけ。
シンプルな部屋に、舌が絡み合う度に響く水音。
俄に頬を赤らめるも、抱きついていた腕の片手を移動させ、彼の頬を包むように触れる。
「ん、…はぁ…」
息継ぎの合間にうっすらと目を開ける。
目の前には紅玉の瞳。
「もっと…。」
視線が絡まれば、キスをねだる言葉。
…無意識だった。
こんなこと、言うつもりではなかったのに。
はしたない女だと思われたろうか。
一抹の不安が胸を過る中、彼のガーネットのように深い色の瞳が閉じられる。
まるで私の言葉に答えるように、深く、長い口づけは続いた。
「………今回の誕生日は、色々と忘れられない日になるな。」
お互いが熱い吐息を溢して、唇が離れていく。
随分と深いキスに、私の口の端からはどちらのものか分からない唾液がこぼれていた。
ファルは笑みながら呟いて、私の髪を撫でる。
その心地よさに目を細目ながら、薬指でつぅと、自らの顎を伝うそれを拭う。
「……おめでとう。」
“忘れられない”などと言われれば、彼にこと関しては、特に単純な私。
嬉しいと己もまた微笑めば、すでに終わってしまったものの、伝えたいと思って祝いの言葉を、漸く伝えた。
8 セリシアーシャ
私の言葉は彼に届いたようで、穏やかな笑みが私の瞳に映る。
彼の大きな手が顎を掴むと、親指が濡れた唇を拭ってきた。
「…ありがとな。忘れねぇよ…。」
この日を忘れたりしない。まるでそう言われているみたいだった。
これ以上の至福を、どう表せばいいのかと思案していた所。…言い終わって、自分の唇を拭う姿に、多分の色気を感じてしまう。
おかげで、私の奥に仕舞い込んだ劣情が、顔を出したがる。
嗚呼、もう、私を捕らえて離さないのだから…本当に悪い男だ。
心の中でだけ悪態ついていると、ひとつ息を吐き出す音。
「明日も仕事だろ?送る…。」
こんな状態で一人にされたとて、それはそれで胸が切なすぎる所であったが、彼からの申し出を聞けば、それだけで私の胸は弾む。
帝国の首席貴族たる私のこの姿、他には見せられないと分かっていても、最愛の彼と共にいられる幸せには変えがたく。
「では、お言葉に甘えるとしよう。」
まだ側にいられる。それだけで、もう充分に幸せで、立ち上がってストールを羽織直す。
彼が外出の準備に取りかかれば、私は部屋の外へとでて、彼が来るのを待つ。
気づけば空は明るくなっていた。
とても短く感じたのだが、どうやら大分長居をしていたらしい。
初夏の陽射しと、空気を胸一杯に吸い込めば、来年も、彼の生まれた日を祝おうと決めて。
丁度良いタイミングで、部屋から出てきた彼を見上げれば、鍵をかける音がする。
「……ほんと、セリアは可愛いな?」
まるでどうしてと、問うかのような一言だった。
以前からも、ふとした拍子に言われることはあっのだが、最近特に彼からよく言われる言葉。
脈絡のない問いかけをしながら、寄り添うように私の腰に腕を伸ばし、彼は歩みを進める。
「……また、そういう…。」
彼はいつも何気なく、恥ずかしいことを言う。
堪えられずに、頬が赤くなるのを自分でも感じる。
しかし、“そういうことを平気で言うな”と続けようとした言葉を途中で終わらせる。
折角なのだから、今くらいは、昨日の延長で素直になろう。
そう思って、チラと視線だけ、私より背の高い彼を見あげる。
彼の大きな手が顎を掴むと、親指が濡れた唇を拭ってきた。
「…ありがとな。忘れねぇよ…。」
この日を忘れたりしない。まるでそう言われているみたいだった。
これ以上の至福を、どう表せばいいのかと思案していた所。…言い終わって、自分の唇を拭う姿に、多分の色気を感じてしまう。
おかげで、私の奥に仕舞い込んだ劣情が、顔を出したがる。
嗚呼、もう、私を捕らえて離さないのだから…本当に悪い男だ。
心の中でだけ悪態ついていると、ひとつ息を吐き出す音。
「明日も仕事だろ?送る…。」
こんな状態で一人にされたとて、それはそれで胸が切なすぎる所であったが、彼からの申し出を聞けば、それだけで私の胸は弾む。
帝国の首席貴族たる私のこの姿、他には見せられないと分かっていても、最愛の彼と共にいられる幸せには変えがたく。
「では、お言葉に甘えるとしよう。」
まだ側にいられる。それだけで、もう充分に幸せで、立ち上がってストールを羽織直す。
彼が外出の準備に取りかかれば、私は部屋の外へとでて、彼が来るのを待つ。
気づけば空は明るくなっていた。
とても短く感じたのだが、どうやら大分長居をしていたらしい。
初夏の陽射しと、空気を胸一杯に吸い込めば、来年も、彼の生まれた日を祝おうと決めて。
丁度良いタイミングで、部屋から出てきた彼を見上げれば、鍵をかける音がする。
「……ほんと、セリアは可愛いな?」
まるでどうしてと、問うかのような一言だった。
以前からも、ふとした拍子に言われることはあっのだが、最近特に彼からよく言われる言葉。
脈絡のない問いかけをしながら、寄り添うように私の腰に腕を伸ばし、彼は歩みを進める。
「……また、そういう…。」
彼はいつも何気なく、恥ずかしいことを言う。
堪えられずに、頬が赤くなるのを自分でも感じる。
しかし、“そういうことを平気で言うな”と続けようとした言葉を途中で終わらせる。
折角なのだから、今くらいは、昨日の延長で素直になろう。
そう思って、チラと視線だけ、私より背の高い彼を見あげる。
9 セリシアーシャ
…決意したとて、恥ずかしいという思いがあり、少しだけ視線を伏せってしまったが、覚悟を決める。
「ファルは、…格好良い…。」
彼のエスコートを受けながら、思う。そういえば、こういったことは、はじめて伝えたような…。
慣れぬことをして、高鳴り続ける心臓をよそに、思考の片隅で今までを振り返る。
それは余裕からでなく、恥ずかしさをどうにかしたいがゆえの行動。
勿論、彼を見上げるなどという勇気はない。
そのために、今、彼がどんな表情をしているのかは分からないが……私にとっても、確かなことがある。
今日という日を、生涯忘れることはないだろう。
〜Fin〜
「ファルは、…格好良い…。」
彼のエスコートを受けながら、思う。そういえば、こういったことは、はじめて伝えたような…。
慣れぬことをして、高鳴り続ける心臓をよそに、思考の片隅で今までを振り返る。
それは余裕からでなく、恥ずかしさをどうにかしたいがゆえの行動。
勿論、彼を見上げるなどという勇気はない。
そのために、今、彼がどんな表情をしているのかは分からないが……私にとっても、確かなことがある。
今日という日を、生涯忘れることはないだろう。
〜Fin〜
10 セリシアーシャ
後書き
超自己満足な内容。
先日のファル君とのやり取りが、もうもうトキメキがつまりすぎて…!
これをセリシアーシャ視点で小説にしたい!という私の願望をぶつけて、勢いのままに書きなぐってしまった。
めっちゃ満足ー!!
…でも、言うほどセリの心情が入っていない…ね。
ノリと勢いで書いたからね…。
でも私は満足!
ここまで読んでくださったかたがいるなら、本当に嬉しいです。
ありがとうございました♪
超自己満足な内容。
先日のファル君とのやり取りが、もうもうトキメキがつまりすぎて…!
これをセリシアーシャ視点で小説にしたい!という私の願望をぶつけて、勢いのままに書きなぐってしまった。
めっちゃ満足ー!!
…でも、言うほどセリの心情が入っていない…ね。
ノリと勢いで書いたからね…。
でも私は満足!
ここまで読んでくださったかたがいるなら、本当に嬉しいです。
ありがとうございました♪