1 セリシアーシャ=ロード=ヴァルキリア

戦乙女〜紡ノ章〜

第一級神格保持女神にしてヴァルキリー。

戦乙女の長にして、現在を紡ぎし「運命神」

…それが、セリシアーシャという、神界きってのヴァルキリーだった。


そう…この物語は、遠き未来には語られぬ、高潔なる女神の編んだ過去…。
けれど、私は記す。彼女という、もっとも気高き魂のために…。

――――ヴィアレスの日記より(一部抜粋)
17 〜]W〜
「…ここを、出ようと思う」
「…、…え…?」
「異世界皇帝…その方に、助けられ…帝国をこの目で見てきた。……偉大な方だ…あの方のお側で、あの方の剣として生きたい。だから…」
「…無理よ…そんなことをしたら、神格を剥奪されるわ。お願い…セリ、考え直してちょうだい?」

ぐったりと、静かに告げられた言葉は、信じられない以外のなにものでもなかった。
戦乙女の頂点に立ち、最高の神格をもつ気高い女神が決めた未来は「離反」に近い…いや、そのものなのだ。
到底許されるはずがない。

「セリ…セリ、主神様だって偉大なお方よ?アタクシたち神々の頂きに君臨しているんですもの。だから…」
「もう決めた。ヴィア…頼む、このまま帝国に行かせてくれ…」
「そんな…」

絶望にも似た感情が、ヴィアレスの体を駆け巡る。
声はもう、届かない。
誰よりも気高くて
何よりも強い意志

……無理だ…

彼女の想いは、誰であろうと変えられない。
ヴィアレスは心でそう言葉を紡ぐと、ゆっくりとセリシアーシャから離れた。
18 〜]X〜
「分かったわ。なら、このまま帝国へお行きなさい。…振り返ってはダメ、よろしくて?」
「…ヴィア?」
「貴女がそうしたいなら、そうなさい。だから後のことは任せてちょうだい」
「しかし、それではヴィアが…ヴィアの神格が剥奪されかねない」
「いいのよ。セリの居ない神界なんて、いても意味がないわ。アタクシ、もっと広い世界を旅して、たくさんのことを知りたいの。だから神格なんて必要ないんだから」

精一杯の強がりなのか、それとも本心か…全てを押し隠して、彼女は笑う。
そして、セリシアーシャの背を押すのだ。
可愛い妹を送り出すために。

「…ヴィア…」
「ほら、行きなさい。アタクシの気が変わらないうちに…ね?」
「ありがとう…ありがとう…不肖の妹ですまない。ありがとう、義姉さま」
「やあね、今生の別れみたいに…それに、セリは自慢の妹よ。もちろん、シャンディアもね。…ほら、行きなさいったら。早くしないと気付かれてしまってよ?」

その言葉に頷くと、セリシアーシャはたったひとり、敬愛していた姉に背を向けた。

そして、二人は言う。

「さようなら、また何処かで…」
19 〜終ノ章〜
セリシアーシャ・ロード・ヴァルキリア…彼女は神格だけではなく、神として定められた現在の運命神の地位も、戦乙女の称号も持ったまま、神界を逃亡した。
ヴィアレス・ブロード・ヴァルキリア…彼女は離反の手助けをしたとして、その身いっさいの神にまつわる全てのものを奪われて、神界から追放された。

あれから幾星霜。
数え切れぬ歳月を迎えた。
過去を紡ぎ、現在を編む姉上方は、もういない。
神々に残されたのは不確かな未来だけ。

今、どれだけの者が過去と現在を識るというのだろうか。
否、いないだろう。振り返ることを知らぬのだから。
けれど、過去も現在も、もとは未来であったのだと。
忘れてしまう想い出を、二人は遠く離れた地で、私とともに造り上げるのだ。

私は忘れない…。

彼女たちの誇りを…。

―――シャンディアの日記より(一部抜粋)
20 後書きという名の反省会
ここまで読んで下さいましてありがとうございます♪
無駄に長く、拙い文章でしたが、セリシアーシャと陛下の出会いを綴ってみました。それに伴い、ヴィアとセリの関係も。

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21 蓮華
続き;

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ではでは、失礼致します