【奴隷王子の決意・前編】

初めてだった。俺のことを本気で叱ってくれた人は…。

アベルの親父さん…パパスさんに殴られて、そのときはスッゲー頭にきた。王子である俺を殴る奴なんて普通いないもんな。なんて無礼な奴だって思ったよ。
でも、それは違ったんだよな。俺のことを本当に心配して、俺の将来を本当に考えてくれて……。
ラインハットに帰ったら、親父にも、アベルにも、そしてパパスさんにも謝ろうと思ってた。
それがあんなことになっちまうなんて……。

【奴隷王子の決意・中編】
俺は、あのときのことは絶対に忘れない。いや、絶対に一生忘れてはいけない。どんなことがあっても…。

毎日毎日、岩を運んだり、壁を掘ったりしてつらいけど、あのときのパパスさんのつらさに比べたらこんなのどうってことないぜ。絶対に生き抜いてみせる。

俺もいつかは、あの人みたいな強い父親になれるんだろうか。っていうかその前にここから出られるのか？アベルはいつも脱走を考えてるみたいだけど…。アベルのこの不屈の精神はやっぱり親父さん譲りなんだろうなあ。

【奴隷王子の決意・後編】

アベル……。お前は親父さんの遺言を守っておふくろさんを探すんだよな？いつもそう言ってるもんな。

俺、お前のためなら何でもするよ。償っても償いきれることじゃないけど、お前を助けていくことが、お前とパパスさんに対する贖罪だと思ってる。だから、何でも言ってくれよな。お前が脱走を考えてるなら俺も協力するよ。
絶対にお前をここから出してやる。そんでもって、あのゲマって奴を倒してパパスさんのカタキをとるんだ。


……随分ともの思いに耽っちまった……。もう寝ないと。明日も朝早いしな。

まったく…ムチで叩くのだけは勘弁してほしいよなあ。

　
　
完