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1 ハロ

悪ふざけ

「結構似合うじゃん、可愛いぜ」
 大学の同級生である宏平が、上機嫌で俺を眺めてきていた。
 夜も更けたいい時間に、俺は宏平のアパートにてナース服を着た姿でこの友人の前に立っていた。自分でも無様この上ない状況であるという事は嫌というくらいに痛感している。友人と男二人、酒を飲んでいた末の成れの果てとでもいうべきものであった。
「あ、あのさ・・・こんなの楽しいか?」
「楽しい」
「・・・・」
 無邪気にそう返答してくる宏平を前に、逆にもう返す言葉がない。
 宏平のムチャ振りと無理強いによって渋々着る事になったナース服(そもそもなぜこんなものをこいつが持ってるのか分からない)であるが、今さらながら俺は無性に後悔してならず、言い様のない恥ずかしさにすっかり酔いも冷めていく。
「せっかくだし、ちょっとイメージプレイとかさせてくんない?」
「はぁ!?」
「ナースとエッチとか、憧れるじゃん」
「ふ、ふざけんな!」
「だからそういうイメージを楽しむだけだってば、本気で怯えなくたって大丈夫だから」
「いや・・・俺相手にそんな悲しい真似すんなってば・・・」
 しかし宏平は、そんなナース姿の俺を強引に抱き寄せてきた。
「ちょっとだけだから」
 酔いのせいかすっかり悪ノリに拍車が掛かった宏平は、俺が穿く白衣のスカートの中へと手を差し込んでくる。
「わわっ・・・や、やめろって・・・!」
 トランクスを下に穿いてるとシラけるという勝手な宏平の要求により、その時の俺はノーパン状態であった。そんな俺の臀部や太股を宏平の手が好き勝手に弄っていく。
「んっ・・・あっ・・・」
 素肌を撫で回す宏平の生々しい手付きに、俺はこの友人の腕の中で激しく身悶える。
 そんな俺の姿を眺めながら、宏平はクスクスと笑ってきた。
「何かホント、可憐なナースにいけないイタズラをしてる気分」
「うっせぇ・・・んぁっ・・・」
 俺のペニスが、宏平に掴まれてしまう。
 そして俺は、自分でもとても受け入れる事の出来ない、あまりにおぞましい事態に襲われる事になったのである。
「あ、順・・・お前・・・」
 すぐさま俺の異変に気付いた宏平が、一転して表情を強張らせてきた。
「いや・・・あの・・・」
「マジで興奮しちまってんのか・・?」
「・・・・」
 おそらく宏平とて冗談半分に俺のペニスを弄くってただけなのだろう。しかしそんな宏平からの刺激に、俺の下半身はあまりにも素直に反応してきてしまったのである。
 しばし俺達の間に重い沈黙が流れていく。
 ただでさえナース服姿であるという事に加え、男相手にマジな興奮を曝け出してしまったという事実に、俺はもう本当に舌を噛んでしまいたいくらいの情けない思いで一杯だった。
 俺は宏平の視線から逃げる様に、真っ赤にさせた顔を深く俯ける。
 しかしそんな俺の様子を、宏平は違う視点で受け取ってしまったらしい。
「そんな色っぽく恥らった感じされたら・・・マジでこっちもヤバいんだけど・・・」
「・・・・」
 若さを持て余す俺達二人の虚しい夜の戯れは、まだ終わらない。